インド外務省は3日、アメリカとの民生用原子力協力協定の施行に関する文書を公表しました。この協定は、インドが核実験を行う内容に触れず、軍事面に用いる核計画を発展させることに干渉しないと明らかに定めています。この協定が実施されれば、アメリカはこれまでの政策を変え、『核拡散防止条約』に調印していないインドへの民生用の核技術と核燃料の売渡を開始することになります。
インドとアメリカが先月に達成したこの協定の中で、アメリカは、インドに民生用の核技術と核燃料を輸出することに同意し、さらに、インドが国際原子力機関の監督の下で、核廃棄物に対する処理とリサイクルを行うことを許可しました。そして、アメリカは、インドの民生用核施設への燃料供給を確保するため、その核燃料戦略備蓄の建設を支援します。また、原子力供給国グループから核貿易の許可を得るため、インドはアメリカと共に、国際原子力機関との交渉と協力を展開するということです。
この協議ではさらに、「インドとアメリカの民生用原子力協力は各分野に及んでおり、その協力は、政府間あるいは権威のある部門の許可を得た個人と組織の間で展開することができる。双方は、共同の利益と責任を持っており、大量破壊兵器の拡散を防止することが義務付けられている」とされています。
しかし、この協定を施行するには、インドと国際原子力機関が核施設の監督問題に関する協定を結ぶほか、原子力供給国グループの45カ国が、『核拡散防止条約』に調印していないインドに一致して承認を与える必要があります。
協定の施行に関する文書が公表されて以来、この協定を支持するインド関係者は満足の意を表し、「協定は、インドの核計画を発展させる権利を守った。インド側の多くの要求が満たされ、、核燃料と核技術の国際舞台における孤立状態を終えることになる」としています。
一方で、この協定はインド軍の核計画の妨げになるという世論の声もあります。この協定は、核実験の問題に触れませんでしたが、協定の施行の上で各国国内の関連の規定や条約に従うべきだと定めています。アメリカが去年12月に採択した『米印平和原子力協力法』によりますと、インドが核実験を行えば、アメリカの大統領は両国の民生用原子力協力を中止する権利があると定められています。また、インドの与党の左翼政党の一つも協定の内容に対し、慎重な態度を取っており、協議の内容に対する詳しい研究をした上で、7日に討議を行うとの考えを示しています。
なお、パキスタンメディアによりますと、パキスタン国家統制委員会は、ムシャラフ大統領の主宰による会議を開き、パキスタンの原子力計画と米印原子力協定の問題について討議したということです。会議後、国家統制委員会は声明を発表し、「米印原子力協定は、地域の安定を脅かすもので、これによりインドは、査察を受けない原子炉から大量の核分裂物質を抽出し、核兵器を製造することが可能になる。同じく『核拡散防止条約』に加入いていないパキスタンとインドに対して、アメリカが平等な態度を取ることができれば、南アジアの安定と全世界の核拡散防止メカニズムの実現にプラスになるだろう」と述べました。
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