外貨準備高が持続的に増加することに対応するため、中国の中央銀行は、このほど報告書を発表し、外貨の投資のルートを拡大することを明らかにしました。これについて、専門家は、外貨準備の一部を投資に運用することは、国際収支の不均衡問題の改善に役立つものだと見ています。
中国の中央銀行の最新統計によれば、今年3月末時点で、外貨準備高は、去年の同じ時期より37%増えて1兆2000億ドルを超えました。中国の外貨準備高が増え続けているのは、外国の直接投資の増加や中国企業の海外での上場の拡大によるものと見られます。
中国の外貨準備の増加について中国人民大学金融・証券研究所の趙錫軍教授は、「中国にとって豊富な外貨準備は、国際貿易において十分な支払い能力を与える一方で、金融調整を複雑化させた」と見て、「外貨準備の増加によって、さまざまな問題が現れた。まず、国際貿易での不均衡が深刻になっている。また、巨額な外貨を持つことによって、中国の通貨政策の独立性に揺さぶりがかけられている」 と語りました。
専門家たちがこうした懸念を示したことを受け、中国政府は、外貨の投資ルートを拡大することを決めました。その中で最も重要な措置は、政府主導で、しかも市場化された外貨投資機構をつくり、中国が持つ巨額の外貨の価値を維持または増加させながら、投資に運用するというものです。
外貨投資の専門機構を設けるのは、多くの国が行っている一般的なやり方です。しかし、中国はこれまで、国家外貨管理局が外貨の投資を担ってきました。投資の対象は主に、海外の信用度の高い国債や、国際金融機関の債券などです。これらの投資は、リスクが低いものの、それだけ収益は高くありません。したがって、専門家たちは、国家外貨投資会社が設立されれば、中国の外貨準備の運用には大きな変化が起きるものと予想しています。
このほか、中国の中央銀行は、企業や個人の海外への投資ルートを拡大すること、海外の株や基金などへの投資を奨励すること、海外での企業の設立に直接投資すること、中国の商業銀行の海外進出を検討することなどを提案しました。これについて趙錫軍教授は、「いままでの政策は、外貨の流入を奨励することを中心としてきた。しかし、外貨準備高が大幅に増え続けているいま、政策を調整しなければならない。中央銀行は『海外への投資ルートを増やす』と提案しているが、これが実施されれば、中国の企業が海外への投資を拡大し、中国の国際収支がバランスを取り戻すことができる」と分析しています。
現在、中国の外貨準備のうち、アメリカドルが多数を占めているため、今回の「外貨投資のルートを拡大する」という対策は、ドルに影響するという見方があります。これに対し、中国の中央銀行は、「今回の対策は、新しく増加した外貨の運用に関するものだ。既存の外貨資産には影響はないし、ドルを大量に売ることもない」としています。(翻訳:鵬)
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