IAEA・国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、22日、IAEA理事会と国連安保理に対して、イランの1737号決議の履行状況に関する報告を行ないました。このなかで、安保理が定めた60日間の期限内にイランはウラン濃縮活動を停止しなかったと報告しました。これにより、イラン核問題の行方、そして国際社会がどんな反応をとるのかが大きな注目を集めています。今日の時事解説は、これについて語りましょう。
エルバラダイ事務局長はその報告の中で、イランでは、核開発の工業化に向けて、今でもウラン濃縮設備の設置、研究が拡大されていると指摘しています。また、イラン側の協力がなかったため、IAEAの特別査察チームは、核開発の具体的な状況を把握できなかったということです。この報告ののち、イランのサエディ原子力組織副主席は、改めて、引き続き核開発を実施していくことを表明し、またこの報告により、イランの核開発が軍事目的でないことが明らかになったと語りました。
一方、バン・ギムン国連事務総長は、この状況に強い憂慮を示した上で、安保理協定に従い、国際社会との交渉を再開し、平和的な形で核問題における食い違いを解決するよう、イランに求めました。
西側諸国は、イランが民生用であることを表面的に装いつつ、実際には、裏で核兵器開発を行なっているのではと疑っています。一方、イランは核開発が完全に平和利用のためだと主張しています。アメリカを始めとする西側諸国の主張で、国連安保理は、去年の12月、イランに対し、60日以内にウラン濃縮活動をストップするよう定めた1737号決議を採択しましたが、イランは期限内に譲歩を示しませんでした。
イランは、この問題において、硬軟二つの立場を使い分けています。アハマディネジャド大統領は、強硬な態度で、核技術はイランの発展にとって重要であり、短期間に核技術を把握すると主張しています。一方、他の首脳は柔軟な態度を示し、平和的なルートで核問題を解決していくと再三述べています。これにより、イランは、自国の利益を最大化しようとしているというわけです。
アメリカにとって、イランの核開発阻止は、中東地域での核拡散を防止するとの思惑があります。これまで、アメリカは、軍事行動と二国間協議以外のあらゆる手段を講じましたが、効果はありませんでした。ライス国務長官とホワイトハウスは、イランに対する軍事行動の計画はないとしてきましたが、先月、ブッシュ大統領は、中東地域に弾道ミサイルシステムを設置し、合わせて、湾岸地区に空母一隻を追加派遣することを決めました。これは、イランへの軍事行動を前提としたものと見られています。
IAEAの理事会は、3月5日から9日にかけてエルバラダイ氏の報告に関して検討する予定で、国連安保理は、それを受けて、改めて審議を行なうことになります。これでは時間がかかるため、安保理介入の前に、イラン核問題に関する会談が行われる可能性もあります。ウラン濃縮活動に関して、どちらが実質的な譲歩をし、共通認識に達することができるかが大きな焦点となっています。(翻訳:李軼豪)
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