イスラエル軍のハルツ参謀長官は16日夜、去年夏のレバノン紛争の責任を取り、辞表を提出しました。その後、多くのイスラエル人は、レバノン紛争対応の失敗について、オルメルト首相とペレツ国防相も責任を取るべきだと要求しています。同じ日、イスラエル警察当局は、大手銀行の民営化に絡む不正疑惑があるとして、オルメルト首相に対する捜査に着手すると発表しました。オルメルト首相は現在、巨大な政治的圧力に直面しています。
去年8月に終わったイスラエルとレバノンの紛争では、イスラエル軍はレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに拉致されたイスラエル軍兵士2人を奪還できませんでした。それに加えて、ヒズボラを徹底的に打ち破ることもできなかったことから、イスラエルの世論は、イスラエル軍がこの紛争で失敗したとして、オルメルト首相や、ペレツ国防相、ハルツ参謀長官の責任を問う声が高まってきました。
こうした情勢の中、オルメルト首相は、調査委員会を設置し、レバノン紛争中の、イスラエル政府や軍の指導者による指揮のあり方を検証してきました。その結果、作戦指導や運用の不手際が分かりました。それを受け、ハルツ参謀長官は、責任を取って辞任すると表明したものです。ハルツ参謀長官の辞任について、オルメルト首相は、遺憾の意を示した上で、「関係部門と相談して、できるだけ早く新たな人選を行なう」と述べました。
一方、イスラエルのメディアは、ハルツ参謀長官の辞任は、オルメルト政権にとって大きな衝撃だとしています。イスラエルのラジオ局は16日、ハルツ参謀長官の辞任は、「ドミノ倒し」のような連鎖反応を起こし、ペレツ国防相、さらにはオルメルト首相の辞任を導くこともありえるとしています。
これと同時に、右派政党・リクードと左派政党・メレツなどの反対派政党は、オルメルト首相の辞任を求めています。
ところで、ハルツ参謀長官の辞任に先立ち、イスラエル警察当局は、オルメルト首相に対する正式な捜査に着手すると発表しました。オルメルト首相は財務相を務めていた2005年、国内で2番目の「レウミ銀行」の民営化に関連して、政府保有株の売却を巡って、知人2人に入札の便宜を図るなどした疑いが持たれています。
これら一連の事件の影響を受け、オルメルト首相に対する支持率は14%にまで急落し、このほど行なわれた世論調査では、「首相が辞任すべき」と思う人は半分に上っています。また、オルメルト首相が率いる中道派政党カディマに対する支持率も下がっています。現時点で選挙が実施された場合、リクードの議席が現在の3倍に増え、やがて与党になると見られています。
ところで、オルメルト首相は現在、厳しい立場に追い込まれているものの、すぐ辞任することはできないと、関係者は見ています。その理由は、オルメルト首相が率いる連立政権に対して、国会で依然として強固な支持があり、また、首相が辞任した場合、現時点で次期首相にふさわしい人物もいないからだとしています。これについて、イスラエルの専門家・イムバル氏は、「オルメルト政権が、この危機を乗り越えることができるかどうかはまだ分からないが、ハルツ参謀長官の辞任によって、イスラエル政府は揺さぶられたと述べました。(翻訳:鵬)
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