イラクのタラバニ大統領は10日、バグダッドで記者会見し、アメリカ議会イラク研究グループの報告書を強く非難し、この報告書は、公正ではなく、イラクの主権と憲法を破壊するものであると見ています。ただ、世論は、イラクの大統領が報告書に強く反対することには原因があるものと見ています。
タラバニ大統領の批判を一つにまとめば、アメリカのイラク政策の変更が連邦制というイラク憲法の原則に違反し、イラクの主権と憲法を破壊したというものです。タラバニ大統領は、クルド人です。イラク北部に集中しているクルド人はフセイン政権の時長期にわたって抑制されました。1990年、湾岸戦争後、関係諸国はイラク南部と北部でそれぞれ、飛行禁止区域を設け、クルドの北部地区は世界の保護の下で、自治を実施、フセイン政権の支配からほぼ抜け出した状態にありました。イラク戦争後、イラクの政治は憲法上、連邦制の原則とクルド人の自治的地位を確立しました。それに、イラク北部の石油の埋蔵量が非常に豊かで、自治によって、クルド人は巨額の石油収入を得ました。また、強い経済力はクルド人の自治に強い後押しを加えました。イラク研究グループの報告書は、イラク中央政府の基盤強化を強調し、イラクの大量の石油資源に対するより集中的な支配を提案していますが、これは、言うまでもなく、クルド人の利益を損なうものと言えます。
この報告書は、また、フセイン政権の官僚が以前のポストに戻ることを許可するというものです。これ対してもクルド人が断固と反対しています。クルド人は長期にわたって、フセイン政権の抑圧を受け、心から憎しみを覚えています。以前の、イラク憲法草案では、フセイン政権の与党・アラブ復興社会党のメンバーの政治活動への参加を禁止することを明確にし、クルド人と抑圧されたシーア派の意志を十分に表しました。その後、スンニ派の強い反対の下で、憲法では、フセイン政権の構成員の政治活動参加を禁止すると改めました。クルド人はフセイン政権を徹底的に清算し、新政権におけるその地位と利益を維持しようとしています。今回イラク研究グループの報告書はこの点でクルド人の敏感な部分に触れたものとなります。二日前、クルディスタンのバルザニ大統領はこの報告書を強く批判するコメントを発表し、「この報告書は、連邦制の原則や憲法に著しく違反するものである」と指摘しました。
専門家は、イラク研究グループの報告書は、ブッシュ大統領がイラクの泥沼から抜け出すために多くの新しいアイディア示したものの、発表後、直ちにクルド人の強い不満を引き起こしたとしています。イラクの武力衝突が未だ解決されていない状況の下で、教派間の矛盾はより激化し、アメリカがイラクの困難な局面から抜け出すことが出来るかどうかは世論の注目を集めています。
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