イスラエルのオルメルト首相代行は10日、「イスラエルは東エルサレムに居住しているパレスチナ人に対し、今月末に行なわれる予定のパレスチナ評議会選挙への参加を許可する」と表明しました。これはイスラエルのシャロン首相の病気が重くなった後、イスラエルとパレスチナ問題の処理におけるイスラエル政府の重要な決定の一つで、シャロン首相の病状が地域情勢にもたらす衝撃を緩和させる意義を持っています。

　オルメルド首相代行はこの日、アメリカのライス国務長官と電話会談し、「東エルサレムに住むパレスチナ人はこれまでの方法と同じく、地元の郵便局でパレスチナ評議会選挙に投票することが出来る。しかし、パレスチナのイスラム勢力ハマスの候補者の東エルサレムにおける選挙活動は禁止されることがその前提条件となる。イスラエル内閣は15日の会議で、この問題を表決する」と述べました。これに対し、ライス国務長官は「アメリカは中東の和平案『ロードマップ』についてシャロン首相との合意をまもり、パレスチナとイスラエル両国の共存を支持するブッシュ大統領の示した立場を変えることはない」と示しました。この前日、パレスチナ暫定政府のアッパス議長は「アメリカはすでに、東エルサレムに住むパレスチナ人の評議会選への投票を保証すると確約したから、評議会選挙は予定通りに行う」としました。

　パレスチナ評議会選挙は今月25日に行なわれる予定ですが、初めて選挙に参加するパレスチナ武装勢力はその強い力を示しました。この前、イスラエルは選挙でハマスの合法性を承認することになるという理由から東エルサレムに居住している25万人のパレスチナ人の投票を拒否しましたが、パレスチナ側は東エルサレムのパレスチナ人が投票できるかどうかはエルサレムの主権の所属に関わる原則的な問題だ。イスラエルがその投票を拒否すれば、パレスチナは評議会選挙の延期を考えると示しました。

　シャロン首相が今月4日、脳出血で緊急入院しました。これにより、そもそも混乱していたパレスチナ・イスラエル情勢がいっそう変化する可能性が高まり、パレスチナ評議会選挙が予定通りに行われるかどうかは更に不確定となりました。ハマスが評議会選挙の延期に断固として反対しているため、選挙の延期はハマスとパレスチナ当局との対立を招く可能性があります。また、アメリカとEU・欧州連合もパレスチナ・イスラエル情勢を安定させる大局から、パレスチナ評議会選挙が予定通り行われるよう希望しています。アメリカのウェルチ国務次官補とエイブラムス副国家安全保障顧問は近いうちに中東地区を訪問し、パレスチナとイスラエル、パレスチナ評議会選挙の問題について討議することになっています。この背景の下で、イスラエル政府はようやく、東エルサレムのパレスチナ人がパレスチナ評議会選挙の投票に参加することに同意し、選挙の予定通りの実施に向け環境を作り上げました。

　世論は、イスラエル政府がシャロン首相の病気期間中にこの決定を下すことは、ある面でオルメルト首相代行を初めとするイスラエル政府がシャロン首相の病気によるショックを効果的に緩め、各部門が正常に業務を遂行しており、権力の空白がないということを反映しているとしています。オルメルト首相代行はシャロン首相が8日入院した後、初めての閣議で、「各政府部門は、シャロン首相のために祈ると同時に、仕事に集中し、国家と政府の正常な政策遂行を保証しなければならない」と述べました。