アメリカホワイトハウス傘下の国家安全保障会議は昨日「イラクでの勝利に向けた国家戦略」と題する
文書を公表しました。また、この日、ブッシュ大統領は演説で、その対イラク戦略について説明しました。専門家はこの文書とブッシュ大統領の演説は古い主張を再度繰り返したに過ぎず、新しいものはないとしています。今日の時事解説はこれについてお話しましょう。
ホワイトハウスのインターネット・サイト上で公表された「イラクでの勝利に向けた国家戦略」はブッシュ政権がイラク問題に明らかにした初めての総合的戦略です。この文書繰り返し強調するのは米軍の撤退スケジュールを確定させてはならない。でなければ、テロリストにつけこまれるチャンスを与えてしまうことになる」と言う点です。また「フセイン政権崩壊後3年間だけで、イラク治安部隊がテロリストを打ち負かすだけの戦闘力を持ち、或いは民主的な政権を樹立することは望めない。加えて、イラクの隣国・シリアとイランはいまだにテロリストを支援し、イラク情勢を更に複雑化させている」と指摘しました。
この日、ブッシュ大統領はメリーランド州の海軍士官学校で演説を行い、「現在、駐留米軍の重点はイラク治安部隊の訓練に置いている。これは治安部隊の作戦遂行能力を向上させるためだ」とした上で、イラクでの目標達成まで米軍の駐留を続ける方針を改めて強調しました。
この「イラクでの勝利に向けた国家戦略」は米軍の駐留泥沼化しつつあり、アメリカ国内でもイラク撤退を叫ぶ声が高まっている背景の下で発表されたものです。
現在、イラク駐留米軍は15万9000人に達しました。また、イラク戦争が勃発して以来、米軍の死亡者数は2100人となりました。アメリカの多くの国民はブッシュ政権のイラク戦略を非難し、早めに撤退するよう政府に呼びかけました。AP通信などが実施した最新の世論調査によりますと、ブッシュ大統領の支持率は37%まで落ち込み、またイラク政策への不支持は62%に上り、過去最高を記録した」とのことです。
民主党と多くのアメリカ国民はこの文書と大統領の演説はいずれも新しいものがないと見ています。ブッシュ大統領と選挙で戦った民主党のケリー議員は「今、アメリカがイラクから逃げるべきだと提案する人がなく、確実な撤退スケジュールも要求しようとしないが、ブッシュ大統領はそれがいつになるかについて国民に明確に説明する義務がある」と述べました。
このことから分かるように、今回の文書とブッシュ大統領の演説はアメリカ社会の不満を軽減させることはなく、イラク問題は依然としてブッシュ政権の難題となっています。
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