今年は中国の内蒙古自治区が成立して60周年です。このほど内蒙古東北部のホロンバイル大草原へ取材に行ってきました。
地元の人の話によると、ホロンバイルは内蒙古で最もよい草原だということです。ここには世界でも面積がナンバーワンの天然草原があります。ここは中国で面積が最も広い、農薬などを一切使わない牧草を利用した畜産業の基地でもあります。
「ホロンバイル草原の生態環境は悪化した。これは誰も否定できないし、避けられない事実だ」と私を驚かせた人はホロンバイル市のハイラル区農業牧畜業管理局のバーケン局長です。バーケン局長は、牧畜民の息子で、22年農業と牧畜業に関わる仕事に携わってきました。
バーケン局長の話によると、ここ数年連続して旱魃に見舞われたということです。そして、家畜の頭数が増加するに従って、ホロンバイル草原で取れる牧草の量は以前よりだいぶ減ってしまいました。昔は、1ヘクタールの草地から450キロの牧草が取れましたが、今は75キロしか取れません。
このことについて、ホロンバイルのダライ・ノール国家級自然保護区管理局の劉松涛副局長も次のように証言しました。
「1986年から2001年まで、ホロンバイル草原の生態環境はさほど悪化していなかった。しかし、2001年以降、連続して旱魃が発生し、毎年の降雨量はわずか100ミリだ。中には100ミリに足りない年もあった。草原の生態環境はもう限界だ」
ホロンバイル市の陳バルグ県のある村の牧畜民・ホビスガラトさんにも草原のことを聞きました。ホビスガラトさんは、「今の草原は見た目には緑いっぱいだが、牧草の種類がだいぶ少なくなった」と教え、次のように話しました。
「請け負った牧場は連続した旱魃で草が枯れてしまった。牛と羊が肥るはずの夏と秋も、ずっと枯れた草を食べているため、ぜんぜん肥らない。草原を保護し、砂漠化した草原を元のように戻すことが今の草原にとって最も大事なことだ」
ホビスガラトさんの話したとおり、ホロンバイル市政府は草原を保護し、生態環境を回復することに力を入れています。ここ数年、一部の牧場で放牧の禁止を行っているほか、家畜の頭数を減らすことなどして、草原の生態環境の保護を目指しています。
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