文字通り、「西部」の地区ということですが、中国におけるこの言葉は、少し意味が加わってきます。
中国では、1978年から、いわゆる「改革開放」が始まりました。それにより、特に大陸南東部の沿海地区が著しく経済発展したことは皆さんもご存知でしょう。しかし、この「発展」には「地域的ひずみ」が起きたのも事実です。経済的にも豊かになりつつある南東部にくらべ、大陸西部の内陸はかなり立ち遅れている状況にあります。これを解消するため、1999年6月、当時の江沢民主席が発表した「西部大開発に関わる基本方針」を基に西部地区の開発が国家プロジェクトとなりました。2000年3月、全国人民代表大会において、正式に決定され、国を挙げての西部大開発がスタートしたのです。
「西部大開発」の対象地域は、四川、貴州、雲南、陝西、甘粛、青海、新彊ウィグル地区、チベット、寧夏回族、重慶の10地区です。そして、このプロジェクトがスタートして6年余り。西部地区の経済発展は順調に進んでおり、著しい成果を収めています。
2005年の西部地区のGDPは3兆3300億。2000年に比べて倍増となりました。この間の西部地区のGDPは年平均11%のペースで増えています。またインフラ整備も順調で、この間、西部地域で始まった交通、エネルギー、通信などの重点プロジェクトは70件、資金投下総額は約1兆元に上っています。その一つが、あの世界で最も標高の高いところを走る鉄道、青蔵(青海チベット)鉄道の建設であることはよく知られているところです。
これにより、西部地区は人口増加を招くとともに、農業、畜産、そして工業も著しく盛んになりました。しかし課題も生まれました。それにより、地域によって、自然環境が損なわれるケースが生まれたのです。特に、森林破壊、土砂流失、砂漠化等が中国の北部・西部を中心にかなり進んでいます。例えば、森林面積は現在、国土の14%程度に減少しているというのが現実なのです。
ここ数年、中国は経済発展のために、自然環境をある程度、犠牲にしてきました。しかし、ある程度の経済成長の成果を生んだ今、発展だけを求めていくことは許されません。自然環境や生物の多様性を守ることも、中国の大きな課題であり、責任となっているのです。
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