同じ地域に住む人々の間には、利害も様々であり、揉め事は避けられません。この決して避けられない揉め事をどう解決するか・・・「調和の取れた社会」を目指す中国で、「調和の取れた」街づくりを模索することは非常に大切なことです。
住民間の揉め事を解決するために、中国中部、河北省石家荘市には、効果的な方法を使っています。地域に設けられた仲裁機関を通じ、地域の事情に詳しい人を仲裁役として、訴訟を起こす前に、解決の道を図るというものです。この仲裁機関とはどんなものか、現地を訪ねてみました。
石家荘市長安区に住む蒋周蘭さんは先日、ごみの処理のことで隣の家と揉めました。最初の口げんかから、相手を殴ってしまい、揉め事はエスカレート。ついに訴訟に持ち込もうかというところまできてしまったのです。隣同士であるにもかかわらず、関係はどんどん悪化し、非常に緊張した状態が続いていました。
このことを知った地域の仲裁機関では二人の"仲裁人"を派遣し、調査を始めました。この揉め事、実際には隣同士のゴミの処理をめぐる小さな出来事から端を発したもの。裁判所までいかなくても、双方が冷静になって話し合いをすれば、解決できることです。地域の事情や当事者の家庭の状況にも詳しい仲裁人は、親身になって、また粘り強く双方を説得しました。当の本人たちもこれ以上、争ってもしょうがないということが分かり、結局、握手して仲直りしたそうです。
今では、当事者は双方とも、とても感謝しています。当事者の一人、蒋さんのお父さんの話です。
「仲裁の人たちが調停に来なければ、息子達は今、どうなっているか分かりません。無事に仲直りできて良かったです。裁判所で訴訟に持ち込んでしまうと、時間もかかるし、費用もかさみます。あと、地域のことを何も知らない人に解決を委ねるより、この方が納得もいきますしねー。」
石家荘市はここ数年、この仲裁機関を住民の揉め事の解決における重要なルートに位置づけています。スタッフは、丁寧な態度で面倒な問題の解決に尽力して、住民からも少しずつ信頼を得てきています。
この機関の責任者、石家荘市人民調停委員会のヒョウ玉平さんです。
「この地域の仲裁機関を通じて、多くの揉め事を解決することができました。スタッフのみなさんは実際の成果によって、住民から信頼を勝ち取っていると言えるでしょう。何か揉め事があったら、まず思いつくのが、仲裁機関に頼むこと・・・今は、少しずつそうなりつつあります。」
石家荘市の仲裁機関を訪ねました。事務室内の壁には、「握手して仲直りしよう」とか、「隣近所は仲良くしよう」などのスローガンがかかっています。仲裁機関の趣旨を表すものです。安定した調和の取れた地域づくりの理念を押し広めようというものです。
現在、石家荘市には、このような地域仲裁機関が1万ヶ所を越えていて、計17万人のスタッフがいます。その活動は住民間の揉め事の調停だけでなく、地域の企業等との間に何か問題が発生すれば、その調停を依頼することもできます。
石家荘市では、住民が何かの揉め事に巻き込まれたとき、まず先に選ぶ解決方法、それが地域の仲裁機関に調停を頼むことになりつつあります。市司法局地域活動課のカ香亭さんは、地域の仲裁機関の活動を高く評価しています。カさんの話です。
「地域の仲裁機関は実は、最も基本的な解決方法だと思います。和解を大切にする中国の古くからの伝統にも合っていますしね。訴訟の数を減らすとともに、人々の揉め事をうまく解決できる・・・これが地域仲裁機関のもっとも大きなメリットだと思います。また、「調和の取れた社会」の構築という国家目標にも合致するというわけです。」
地域に設置された仲裁機関は、また地域の安全にも寄与しているといえます。また司法上でも、行政上でも、解決が難しい事案について、その両者の溝を埋める役割をしているともいえます。
2005年、石家荘市では市民の揉め事を合わせて9万件余りを調停で解決しました。2007年は、この数字がさらに増える見込みです。地域仲裁機関は、その役割をますます拡大しているといえます。
これについて石家荘市司法局地域調停課のカ香亭さんはこのように言います。
「地域仲裁機関のシステムはまだ改善を重ねているところです。このシステムが完成すれば、調停が、よりスムーズにいくようになります。住民間の問題はエスカレートすることなく、住民間で解決できるというわけです。国の基本は住民のコミュニティです。住民同士が仲良くしてこそ、調和の取れた社会の構築が可能となります」
石家荘市では、地域の仲裁機関の設置を進める一方、農村部から出てきた人々によりよいサービスを提供する、治安を安定させるなど、様々な措置をとって、調和の取れた街づくりを目指しています。
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