中国北西部の蘭州市にはおじいさんから孫までハーモニカが大好きな「ハーモニカ一家」があります。72歳の傅豪久さん始め、家族全員がハーモニカ演奏を生活の中の最大の楽しみとしています。

　2004年に香港で開かれたアジア太平洋ハーモニカフェスティバルで、傅豪久さん一家はこの曲を演奏して会場の人々を大いに沸かせました。

　傅豪久さんは定年退職した元エンジニアです。仕事で何十年も、機械と付き合っていましたが、ハーモニカを始めたのは、そのずっと前、15歳の頃からです。

　「ハーモニカに対して、すごく特別な気持ちをもっているんですよ。15歳の頃から始めて、それから片時もハーモニカを手放したことがありません。子供のころから音楽が大好きでしたから・・・」

　中国ではかつて、ハーモニカブームがありました。大人から子どもまで、この手軽で美しい音色の楽器を競って練習したころがあったのです。しかし、人々の収入が増え、経済的に豊かになるにつれて、楽器の種類も多様化し、ピアノやバイオリンなどの楽器が喜ばれるようになりました。でも、傅豪久さん一家は、それでもなおハーモニカにこだわり続けます。今やその家族、三世代5人はいずれも「ハーモニカの達人」と呼ばれるようになりました。

　より多くの人々にハーモニカの良さを知ってもらおうと、傅豪久さんは1985年、「蘭州市ハーモニカ協会」を創設して、自ら会長に就任しました。ハーモニカの勉強会を開いたり、仲間と一緒に公演を行なったりするうちに、メンバーも増え続け、いまでは、全国でも有数のハーモニカ協会となりました。傅豪久さんは、ハーモニカの普及に対する功績が認められ、政府や中国音楽家協会から表彰を受けたこともあります。また家族や傅さん弟子も、多くのコンテストで上位進出を果たしました。

　子供の頃から、ハーモニカと育った傅さんの息子と娘、そして孫たちも、影響を受けてハーモニカを演奏するようになりました。今や中国のハーモニカ界でも有名なハーモニカ一家となったというわけです。

　家族によるハーモニカ公演は1985年から始まりました当時51歳だった傅豪久さんは十代の二人の子どもを連れて親子三人の初舞台に臨みました。そしてその後、お孫さんは五歳からおじいさんと一緒に舞台に立ちました。「蘭州ハーモニカ一家」は専門家からも注目される存在となったのです。

　傅豪久さんの娘、紅艶の話です。

　「家族がみんなハーモニカを好きになったのは、やはり父のおかげです。このハーモニカがあるからこそ、家族が団結し、また人生が楽しくなりました。父に感謝しています。実家に戻る時、私はいつもハーモニカを持って帰ります。父に聞いてもらって、どこか悪いところを指摘してもらうんです。」

　ハーモニカを演奏するとき、それぞれに役割分担があります。息子・傅文偉さんです。

　「5人で合奏する時は、まず父がメロディを吹きます。姉の息子もメロディです。私は低音の部分、そして、姉と私の息子は和音です。うちの息子は、小さい頃からずっとおじいさんの指導を受けていますから、ハーモニカは私よりも上手になってしまいました。私も負けないように頑張らねばと思っています。」

　二人の孫はおじいさんから、毎日のようにハーモニカを教わっています。その甲斐あって、上達も早いようです。そのうちの一人、弘亮ちゃんは今年12歳。弘亮ちゃんの話です。

　「ハーモニカは面白いものです。毎回、舞台に立つと、緊張することはしますけど、みんなが喜んでくれるから、私もうれしくなります。そして、何よりもおじいさんからほめられるのが嬉しいです。この"ハーモニカ一家"に生まれたことを誇りに思っています。」

　家族でハーモニカを楽しめるということに、傅豪久さんは喜びを感じています。最も大切な趣味であるハーモニカに「後継ぎ」ができて、"安心した"そうです。

　傅さんは、中国にこんな「ハーモニカ一家」がもっと現れてほしいと思っています。なぜなら、ハーモニカは幸せな家族を作るから・・・傅豪久さんはこう言います。

　「ハーモニカを吹くことで、家族のコミュニケーションの手段が一つ増えました。あと、舞台での公演もありますから、その前には一致団結して練習しますし、家族みんなの楽しみがあるというのは幸せです。大切なのは、ハーモニカの演奏を通じて、一家の絆を深め、楽しくて健康的な家族を築き上げることです」

　年末年始の今頃、この「ハーモニカ一家」は各地での公演で忙しく飛び回っていることでしょう。