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万里の長城の「長城」
   2006-10-26 15:21:24    cri

 万里の長城は、中国人民が世界に捧げた貴重な文化遺産です。しかし、現在では戦争や風雨にさらされたため、破損がかなり進んでいます。そこで、祖国の誇りである長城を保護しようと、力を注いでいる人々がいます。そのうちの一人、20年間、万里の長城の保護に取り組んできた張鶴珊さんをご紹介しましょう。

 張さんは河北省の山間にある村の農家に生まれました。村からは、万里の長城がはっきりと見えます。張さんの祖先は、その多くが万里の長城を守る兵士で、彼らが駐屯地にそのまま定着して、今の村が出来たそうです。

 「子供のころから、父から万里の長城のことをたくさん聞いていました。長城が作られた当時の物語や、長城に対する思いなど、たくさん語ってくれました。私たちの村は常に、万里の長城とともにあったのです。」

 村の歴史の記述によりますと、張さんの村に近い長城の城壁は、今から600年あまり前の1381年に建てられました。その城壁は張さんが子供のころの大切な遊び場でした。だから、長城は張さんにとって幼年時代の思い出の場所です。

 子供のころは、城壁はそれほど破損していなかったと張さんは記憶しています。しかし、村の人々には万里の長城を保護しようという意識があまりありませんでした。そのため、この祖国の誇りでもある貴重な文化財は時とともに風化し、またレンガが盗まれるなどの事態も発生しました。その様子を見ていて、張さんは居ても立ってもいられなかったといいます。

 そんな張さんが長城保護に力を注ぐようになったきっかけは、長城の城壁に立っていた石碑がなくなったことです。石碑には、数多くの文字が刻まれていて、長城の展望台に立っていました。

 「1978年頃だったと思いますが、その石碑を見たことがあります。倒れていましたが、崩れていませんでした。ところが、80年に、その場所に行った時には、すでに無くなっていました。どこにも見つかりません。こんなことを繰り返していたら、いつか万里の長城はだめになってしまう。そう思った私は、その日から、長城を自らの手で保護しようと思うようになったのです。失ってしまったら、もう二度と生まれてこない貴重な文化財ですからね」

 あれから20年あまり。張さんは、長城保護活動を長年続けてきました。

 地元では、城壁のレンガの隙間に隠れたサソリを取って、漢方薬の店に売ってお金を儲ける商売があったり、また羊を長城の上に追いやって、草を食べさせる人たちがいたそうです。これが城壁の破損が進む大きな原因ともなっていました。それを止めさせることが張さんの最初の仕事だったといいます。張さんは毎日10数キロの山道を歩いて、村中の人々を説得して歩きました。

 また、城壁にある排水路に詰まった草木やゴミを取り除く、城壁の周囲に生えた野草を切り取る、外れたレンガを元に戻す、そして観光客が捨てたゴミを収集する・・など小さな活動を少しずつ地道に積み重ねていったのです。

 歩きづらい山道で何度転んだか、靴を何足だめにしたか、張さん自身も分からないといいます。

 そして何よりも辛かったことは、同じ村人から、なかなか理解してもらえなかったことです。万里の長城でサソリをとる、羊を放牧する、これらは全て、村の人々がお金を稼ぐ手段でした。「それをするな」ということは、彼らに「仕事をしてはいけない」というのと同じです。だから、村の人々はほとんど張さんのいうことに耳を貸そうとせず、張さんのことを不満に思っていました。

 しかし、なかなか理解してくれない村人たちを前に、張さんは諦めませんでした。自らの考えを繰り返し説明します。その甲斐あって、張さんの言うことに理解を示す村民が増えてきました。張さんの執念深さに感動する人たちも多くいました。そして成果は徐々に出てきたのです。城壁を損なう人がだんだん減ってきました。張さんがもっと嬉しかったことは、張さんの考えに共鳴して、活動を共にしようとする仲間が出てきたことです。

 村人の李さんです。

 「一昔前まで、人々には文化遺産を保護しようとする意識があまりありませんでした。ですから、長城を破損することも、悪いことだという意識がなかったのです。でも、張さんが私たちを変えました。彼がまず先に長城を保護しようと、呼びかけたかというか、実際の行動でそのようにしているというか・・・今では村人の誰もが長城を保護しようとする意識が強くなり、積極的に保護活動に関わっています。」

 張さんは去年から写真に凝り始めました。毎日カメラを携えて、万里の長城に登り、写真を撮ります。四季折々の、様々な角度からの長城が張さんのレンズに収められました。

 また、長城を保護する活動の中で、張さんは長城そのものの研究にも打ち込んできました。万里の長城が持つ歴史に興味を持つ張さんは、それに関する書籍を集めるため、それまで大切にしていた古代の貨幣のコレクションを売り払いました。また、実際の長城の様子を記録しようと、一つ一つの建物を測量して、歴史書に書かれている誤りを修正していきました。

 それらの結果を張さんは論文にまとめました。その論文は、中国長城学会の学会誌に掲載され、関係者から、高い評価を受けました。そして、2002年、張さんは、その長城学会の一員となりました。居並ぶ学者たちに混じって、学会設立後10数年で初の「農民」会員となったのです。

 中国長城学会の董耀会事務長は張さんのことをこう評価します。

 「今、長城のふもとに暮らす人々の多くが張さんと同じように万里の長城の保護活動に取り組んでいます。彼らは長城を守る長城ともいえるでしょう。中でも張さんは、長年、自らの目で長城をまじかに見てこられました。その存在は、私たち学会にとっても、貴重な存在です。張さんらには、ふるさとを愛し、国を愛する気持ちが見られます。長城を保護する活動はその素朴な表れだというべきでしょう」

 張さんの活動は、また外国からも大きな注目を集めています。張さんの家には、アメリカ、スウェーデン、ノルウェーなどから1000人以上が訪れたそうです。そして皆、張さんの家で長城にまつわる物語に耳を傾け、生の長城の魅力を感じるそうです。

 ドイツから来たウィンナーさんは張さんのことをこういいます。

 「張さんは、誇りをもって長城の物語を話してくれます。これまで聞いたことがない話ですから、驚きばかりでした。感心するのは、非常に細かいところで長城を保護する作業をされているということですね。中国では、このような一般の人たちが長城を守っていることに非常に感心しています」

 張さんは今も、毎日、長城を歩いて、作業を続けています。そして、今では息子さんの暁光さんも、その作業に加わり、親子2代のライフワークとなっています。もっと多くの人たちに万里の長城のことを知ってもらい、そして、長城の保護に加わってもらいたい、これが、張さんの願いです。

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