むかし、山奥に二軒のいえがあり、一軒は金持ちだが欲張りな爺さんばあさんが住み、もう一軒にはその日の暮らしにも困るほど貧しく正直な老人夫婦が住んでいたそうな。
貧しい家では爺さんが毎日柴刈りに出かけ、柴を食べ物に代えてばあさんと過ごしていたが、その日は三日間の大雪が降ったばかりで、爺さんがどんなに苦労してもどうしたことが一本の柴も拾えなかった。そこで爺さんは落胆してある岩に寄りかかり嘆いていった。
「なんということじゃ!これではわしとばあさんが飢え死にしてしまうワイ!」
すると、後ろの岩から一人の仙女が出てきて言う。
「おじいさん!そんなに嘆くことはありませんよ。サイコロがありますから三回振れば三つの願いがかないます。でも四つに願いを出すと全部だめになりますからね。いいですね」
こういうと仙女は姿を消した。喜んだ爺さん、そのさいころを持って家に帰り、ばあさんにこのことを話すと、ばあさんも喜び、願い始めた。
「やさしい仙女さんや。寒さをしのげる家を下され」
これを聞いた爺さんも「それに小さくてもいいから裸麦の畑をおくれ」と願う
「そうそう、じいさん、二頭の乳牛ももらいましょうよ」
二人が言い終わると、どうだろう!これまでのぼろ家が頑丈できれいな家に変わり、家の前には多くの裸麦の穂がなった畑が現れ、それに太った二頭の乳牛が出てきて「モー、モー」と鳴きだしたではないか。
こうして貧しかった老夫婦は豊かになり、幸せに暮らし始めた。
ところがこれを見た隣の欲張りなな爺さんとばあさん、これには何かある、自分たちも損は出来ないと、訪ねてきて訳を聞いたところ、うそをつけないのかかの正直な爺さんとばあさんはことのいきさつを話してしまった。
喜んだ欲張りな爺さんは、次の日にかの山にある岩の前で、ぼろぼろの衣装をまとい正直爺さんのまねをして泣いていると、やはり仙女が出てきてサイコロをくれたので急いで持ち帰り、ばあさんに見せると、同じく欲張りなばあさんが、「金を沢山くれ!」とサイコロを投げ出して叫んだ。これには負けられないと爺さんがサイコロ奪って投げ出し「王様にしてくれ」とわめく!
そこでばあさんが「長生きさせておくれ!それにいつまでも18歳のように若くね」とわめいた。このように二人は奪い合って願い事をわめき合い、そのうちに喧嘩となり、とうとうサイコロを落としてしまった。そこで怒った爺さんが「ふざけるな!やめろ!」と叫んだので、サイコロはふっと消え、何も出なかった。そう、欲張って四つ目の願いを言ってしまったからだそうな!!
はい、おしまい!
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