こうして少年は町にやってきてお城に向かった。しかしお城の大きな門は閉まっていたので少年が必死で門をたたくと、暫くして門番が顔を出した。
「今日は国王様が病気なので、誰にも会わんともいされとる」
「門番のおじさん。おいらは国王様の病気を治しに来たんだよ。おいらはまだ子供だけど。国王様の病気を治せるんだから」
これを聞いた門番は、怪しむ顔をしたが、すぐに少年を連れてお城の中に入れ、病で床に臥しているという国王の元につれてきた。
少年はさっそく国王の耳の中を覗いたが、まさにあのカラスの言ったとおりであった。そこで水をいっぱい入れた水甕を持ってこさせ、甕を軽く叩くと、耳の中にいたクモが這い出てきて網を張り始めたので、少年は網と共にクモを捕まえたあと、国王の耳の中にスーユという油を少し流し込み、綿を軽く詰めた。すると国王は耳の痛みがすっかり取れたのか、起きて座り、ニコニコしながら少年に聞いた。
「でかしたぞや!そちはいつも山奥にいるのに、どうしてわしの耳の中にクモがいることを知ったのじゃ?それにクモをおびきだす方法もな」
「それは実は、実は・・」と少年はホントのことをいおうと思ったが、カラスのことなど国王は信じないと思ったので「実は、柴を刈っているときに、仙女が舞い降りてきておいらに教えてくれたのです」と答えた。
これには国王、「仙女もわしのことを心配していてくれたか」と大いに喜び、自分の病を治してくれた褒美として沢山の金や銀、それに布と牛や羊を少年に与えた。
こうして少年は、その日の夜に家に帰り、国王からもらった褒美を全て母にわたし、自分が見たこと聞いたこと、そしてやったことをはじめから終わりまで詳しく母に語った。
これを聞いた母は「おまえ、鳥のことをどうしてかあさんに黙っていたんだい?」
「だってかあさん。あのカラスが行ったことはホントかどうかわからなかったからね。ほら!母さんはいつもおいらに言ってるだろ。何をやるにしても、ことをしっかり見届けてからと」
これを聞いた母は笑い出し、少年もそれに釣られてわらったという。
はい、おしまい!
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