展示はギャラリーベースで行われており、大きく美術作品(「芸術北京」)と映像作品(「映像北京」)の二部門からなっています。中でも、「映像北京」はアジア唯一の映像アートを専門に取り扱うアートフェアとしての自負も持っています。
展示作品は、中国人アーティストの作品がメインですが、ほかには、韓国、日本、フランス、アメリカなどからも幅広く出品されています。
会場の両脇にはメディア・ブースがあり、現代アートを紹介する雑誌やウェブサイト、出版社などが軒を並べています。
東京から来た日本の美術月刊誌のN記者にとって、今回は5年ぶりの中国のアートフェアの取材です。会場を一巡した後、汗を拭きながらも、興味津々の顔で感想を聞かせてくれました。
「面白かったです。5年前よりは、圧倒的に洗練されています。」
Nさんはこれまでの5年を、「丁度、中国で現代アートのバブルが生まれ、はじけた5年だった」と振り返ります。
「当時はまだ有名な画家はいなかったが、これから盛り上がっていく熱気がありました。」
中国では現代アートのオークション価格は、2005年から急騰し、2008年上半期でピークに達しました。
「中国のWTO加盟につれ、外国画廊の中国進出が可能になりました。これら外国画廊に押されて、現代アートの商品価値とその値段がどんどん高騰し、その値上り幅は、株投資や不動産投資以上に急激なものでした」。業界関係者はこう語っています。香港で行われたオークションでは、現役で活躍している若手画家の作品は、数千万香港ドルで売られていたほどということです。
これについて、N記者はかつて、バブル期の日本で起きたアートバブルでは、欧米の著名な画家の作品が対象とされていましたが、中国では、今、活躍している画家の作品がどんどん高く買われるようになってきたことが特徴だと言います。
「日本では生きているアーティストは、普通、作品をオークションにかけません。しかし、中国では現役の作家もどんどん作品をオークションに出すし、その値段がぐんぐん上がっています。」
先月、アートフェア東京2009を取材したばかりのNさんは、今年、売れている作品の平均的な価格は15万円~20万円(中国はその数倍も高いと言われています)だと紹介し、「日本のギャラリストは、コレクターを増やす面からも、高い作品が一つ売れるよりも、比較的安いものが全部売れたほうがいいと考えているようです」と言います。
さて、中国と日本とで、表現の手法や好みに違いが見られるかどうか、Nさんが分かりやすく解説してくれました。
「日本で一番売れている作品には、村上隆や奈良美智などに代表され、アニメや漫画をモチーフにしたものが多いです。これに対して、中国では、今の中国の社会を揶揄(やゆ)した絵、または、人の顔を描いた作品が多いように思います。
自分たちを見つめ、社会の矛盾やゆがみを表現する作品が受けているようで、素直に美しい絵を書く画風は好まれていないようです。」
歯に衣着せぬ解析に、なるほどとうなずけました。ただし、今回のアートフェアでは、Nさんは新しい変化も感じたと言います。
「若い世代のアーティストが変わり始めたと感じました。彼らは、自分たちを卑下するのでなく、本当に発信したいもの、きれいなもの、オリジナリティのあるものを描こうとしているようです。今後の成長が楽しみです。」
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