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日本語中国語通訳への道~Part3  会議通訳者・蔡院森さん(上)

2011-08-19 21:21:00     cri    

「日々新たなり」をモットーに

 中国で「一番忙しい通訳者」として知られる蔡院森さん。中日政府間交渉から各種専門分野の国際会議、そして、「3・11」東日本大地震後の震災報道の放送通訳まで、中日交流の様々な分野で活躍しており、クライアントから強い信頼を得ています。通訳の技を極めるコツについて聞いてきました。

■空気のような通訳を目指す

――蔡さんは「通訳」という仕事をどうとらえているのですか。

 空気のようなものになれたらいいなと思っています。願わくば周りにその存在を忘れさせたい。例えて言うならば、良い通訳者は、酸素がたっぷり入っている新鮮な空気のようです。それに対して、それほど良くない通訳者は二酸化窒素の濃度が高い空気のようです。万が一、重大ミスでも犯してしまうと、放射能漏れのように大きな害を招きかねません。一例を挙げれば、原発事故関連で、放射線量の単位は「ミリシーベルト」だったか「マイクロシーベルト」だったか、もし訳し間違えると大変なことになってしまいます。

――通訳と翻訳、どちらがより難しいとお考えですか。

 それぞれ個性が違うかと思います。
 翻訳は、辞書やインターネットで調べたり、ディスカッションなどで字句を十分練ったりすることができるので、比較的しやすいですが、通訳は、聞いた話を的確に理解した上で、すぐにそれを外国語で表現しなければいけません。逐次通訳はまだメモが取れますが、同時通訳となると、聞きながら訳すので、通訳の中でも最上級のものだとよく言われています。
 たしかに、その通りのことだとは思います。ただ、それぞれ個性が違うからこそ、実際の仕事においては、実は、難しさの順番は逆になっていると私はそう受け止めています。
 つまり、求められている完成度が、翻訳は100%、逐次通訳は95%、同時通訳となる80%ぐらい訳せば上出来と言えるでしょう。翻訳の場合は、ぴったりの表現を探し求めるため、1日かけて悩み続けるという話も良く聞きます。また、逐次通訳の場合、会議参加者の中には、どちらの言葉にも精通している関係者も多く、通訳の不適切な表現がいつ指摘されてもおかしくないプレッシャーにさらされます。それに比べれば、とっさの反応と効率良さが求められる同時通訳の場合、とりあえずそういったことで心配しなくても良いかなと思います。
 たとえて言うならば、同時通訳はファーストフードで、とりあえずの腹ごしらえが一番の目的です。それに比べて、逐次通訳はディナーで、栄養のバランスもよく、合理的に食事できるよう工夫しなければいけません。さらに、翻訳の場合は懐石料理にあたり、栄養分のほか、味付けも盛り付けもすべて良いものが求められています。

――通訳と翻訳は、互いに影響しあっている関係でもありますか。

 そうだと思います。やはり、翻訳が基礎じゃないかと思います。日ごろの翻訳の積み重ねがあるからこそ、通訳する時にも、スピーディーな反応と熟練した言語の切り替えが初めて可能になります。逆に、普段からできるだけ通訳の量をこなして、生きた言語に触れるようにしてこそ、表現力を豊富にし、翻訳レベルの向上につながっていくと思います。                                         
                                        (つづく)

【プロフィール】

蔡院森(さい いんしん/Cai YuanSen)さん

北京第二外国語学院日本語修士。中国在住の日中会議通訳者。大学教師、日系企業での勤務を経て、2000年からフリーランス通訳者として活躍

 

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