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歩 平中日共同歴史研究中国側首席委員(中)

2009-02-28 23:07:04     cri    

中日共同歴史研究のいま(中)

■歴史問題の接近法、アプローチの違いは?

Q 歩さんはどのように「歴史問題」を見ていますか。この問題を議論する時の中日の違いは?

A 「歴史問題」を語る時、私は三つの必要不可欠な視点があると思います。
 まずは政治的な視点。これは単純なことです。つまり、日本が中国を相手取った戦争が侵略戦争だったかどうかに対する認識です。中日国交正常化の時、日本はこの点をすでに公文書で確認しました。
 しかし、一部の政治家はなかなかこうした認識を認めようとせず、時々、問題発言をして中国国内の世論に刺激を与えます。たしかに、これは「一部の人の言動に過ぎない」ですが、彼らの政治的な影響力を問題として指摘する必要があります。

 二つ目は国民感情の視点。これはたいへん複雑な問題です。国民の歴史を見る目は、感情的で、感性に満ちています。どこの国民もどうしても自らの戦争体験がメインで、相手への理解が十分ではありません。

 例えば、日本人が戦争を語る時は、戦争で嘗め尽くした苦難の記憶が強烈で、日本軍人が中国で何をしていたかについて、あまり良く知りません。中国人も日本軍人より受けた被害が忘れられないが、感情的には、日本人の戦争被害に対する理解が足りません。

 そういうわけで、お互いの国民感情をありのままに、相手にしっかり伝える必要を感じています。これについて、中国では近年、日本人の戦争責任や歴史認識を取り上げたシリーズ図書の翻訳と出版を手がけ、取り組んでいる最中です。

 三つ目は学術研究の視点。この点について、双方はアプローチの仕方や、歴史観に違いがあることを感じています。一例を挙げれば、中国側は歴史問題を評する時、一つ一つの歴史事件を単独な出来事としてとらえず、その前後に起きた事及び互いの関連性を追及します。例えば、9・18事件(柳条湖事件)や盧溝橋事件など一連の出来事を通して、日本は計画的に、中国に対し侵略を一歩一歩進めてきたものだという見方をしています。しかし、これに対して、日本側は個々の事件の偶発性を強調しています。

Q 中国側は、日本側のこうしたアプローチ方法をどのように評しますか。

A 私たちから見れば、日本側のこうした分析は十分納得できるものとは言えず、もっと深く掘り下げて分析する必要を感じています。ただし、一方では、こうした違いを通して、私たちは自分の持っていない相手の長所に気づきました。それはつまり、問題をきめ細かく、具体的に追求しているところです。資料を数多く把握しているのが日本の強みです。総じて言えば、日本は実証研究に長けているのに対して、中国はマクロ的、傾向的なことを総括しようとする特徴があるようです。

Q 近現代史において、「南京大虐殺」や「田中上奏文」などの注目される課題への扱い方は。

A 今回は具体的な事象を研究重点にしていません。何せ初めての共同歴史研究なので、日本の中国侵略は客観的事実だったかどうか、先ずは戦争の性質を明確化すること。

 もっと具体的には、ぜひとも二回目や三回目の共同研究を立ち上げ、引き続き深く掘り下げてほしいと思っています。

 双方は歴史事件をめぐる学術的な相違は、大きな問題とは言えません。それよりも肝心なことは、日本は「中国に対し、一歩一歩侵略を深めた」事実を確認することです。「南京大虐殺の人数が食い違っている」、「田中上奏文は実在しない」ことを理由に、虐殺の事実や、侵略の歴史すら存在しなかったと主張することに反対します。この点、今回、双方は侵略の事実を確認し、今後は実証研究を続ける必要があると一致しました。

Q 戦争がからむ近現代史よりも、古代・中近世史のほうが合意しやすかったですか。

A 学術交流なので、古代史にも意見のぶつかり合いがありました。この部分では、日本文化における中国の影響と独自性について、議論を進めています。

 日本は経済の発展及び国際地位の向上につれ、中国から影響を受けたことについてあまり表に出そうとせず、それよりも日本文化のユニーク性を主張する声が高くなりました。「日本文化は中国の『枝分かれ』や『亜流』だという言い方には賛同できませんが、一方、両者のつながりを否認することもできないように思います。  

■共同歴史記述こそ将来の目標

Q 共同歴史研究はもうエンディングに入ったということですか。

A いいえ、今、第一段階をやっと終えようとしているだけです。今回は両論併記の形をとりますが、いつかは、ドイツとポーランドのように、共同歴史記述ができるようになってほしいです。

 これこそ将来、目標にすべきことではないかと思います。まだやり遂げていない仕事がたくさんあります。

Q 中国側から見て、日本人学者との議論を通して、印象に残ったことや認識を新たにしたことは。

A 戦後、日本は平和的な道を歩んできたこと。そして、冷戦が終息した今、軍国主義が再び日本で復活する可能性は低いと思ったことです。これについて、中国側は提出論文の中で十分肯定し、ODAを含め、日本がこれまで平和に払った努力を高く評価しています。

 また、日本の近代化が中国に大きな影響を与えたこと。確かに漢字は中国から日本に伝わったものですが、近代以降、中国は日本から数多くの単語を逆輸入し、新しい技術やコンセプトをたくさん学びました。日本へ留学した中国人も多かったです。中国の近代化の歩みに、日本の記憶が鮮明だと言えます。

Q 一方、日本側の学者たちの反応はどうですか。

A 「中国の学者と国際的な視野で議論できる」、と感想を聞かせてくれた人がいました。
 新中国が成立して60年、改革開放して30年が経ち、この間、中国の歴史研究は絶えず発展し続けてきました。例えば、「南京大虐殺の数字に同意してくれないと、歴史問題の議論ができない」というようなことはなく、私たちは決して硬直した態度をとらず、あくまで史実を尊重することです。

Q 共同研究の一番の意義は。

A 双方の認識は、想像していたほど違わないと確認できたことです。
 侵略戦争の責任や事実を否認しようとする政治家もいますが、全体的に見ると、史実を認める人のほうが主流で、皇国史観のままの人はとても少ないと言えます。この点、中国のメディアはこれまであまり注目していなかったようですが、共同研究ができる基盤はまさにここだと思います。

 交流が始まる前に、双方が相手に対し偏見を抱いていたかもしれませんが、同じテーブルについて話し合いを進めると、理解が深まりました。 (つづく)

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