先週のある日、国際放送日本語部の同僚・任さんに、知り合いが短編映画を作っているんだけど日本人役の吹き替えをやってもらえないかと頼まれました。中国人の役者が演じた日本人将校の台詞を日本語でアフレコするということで、老人役なので私に声がかかったようです。私は役者の経験もないし、正直に言ってとてもうまくいくとは思えませんでしたが、誰もいなくて困っているようだったので、えいや!っと思ってやってみることにしました。
スタジオで吹き替えに初挑戦
実は、吹き替えの依頼は今回が初めてではありません。
ご承知の通り中国では抗日戦争をテーマにした映画やドラマが大変多く、当然、敵役として悪い日本兵や日本の将校がたくさん出てきます。そんな時、日本人役はまず中国人の俳優で撮影し、後で日本人がせりふだけ吹き替えをするというやり方がほとんどです。その吹き替えに北京在住の日本人が動員されるわけで、若い兵隊の役などは日本人留学生がよく吹き替えをしていますが、将校などある程度の年齢の役に合う日本人は北京ではなかなかいないため、よく私の所にも話が回って来ます。
3年程前にも日本人の老人役があるのでやってもらえないかと声がかかったことがありますが、録音の日にちがちょうど日本に帰るのと重なってしまい他の人を紹介しました。その後、別の会社から日本人の老将校役を探していると言って私の所に連絡がありましたが、その時も何かの理由で実現しませんでした。今回、3度目の正直で実際に録音したわけですが、やはりなかなか難しかったです。
最近はすべてPCで収録するので実に簡単です
中国人の役者が一応日本語でしゃべって収録した画面に合わせて日本語をしゃべるんですが、中国人の役者がしゃべっている日本語がかなりいい加減で台本の通りに読むと口パクが会いません。何とか口を合わせようとすると、読み方が棒読みになってしまい、監督から「もっと感情をこめて」などと言われます。
それでもどうにかこうにか進んで最後の台詞になったら、監督が「殺気をこめて!」と指示してきたので、「いやあ殺気って言ってもなあ…」とホントに困ってしまいました。何度も録り直し、結局監督があきらめてOKになりましたが、冷や汗ものでした。
日本語部の任さん、若い監督、私
戦場では普段は善良なごくふつうの人々が残虐な兵士になってしまうのだと思います。その辺のことを役として演じてみたかったのですが、吹き替えはワン・シーンで台詞は3つしかなくどういう気分の流れかイマイチよく分かりませんでした。もう少し感情移入して悪い日本人を追体験してみたかったのですが、ちょっと残念です。(大野清司)
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