(日本で開催した個展での実演ショー)
中原:挑戦といえば、水墨画の世界で生きていくって決心するのは、とても大きなことでは無かったですか?
安藤さん:どうにかならなかったらどうしようと、二足のわらじを履き続けて、タイミングを逃してしまうよりは、これで行こうと、駄目ならそのとき考えよう。と言う感じです。そういう決心ってなかなか出来ない物ですが、決めてしまうと意外となんとかなります。
(繊細な作品から力強い作品まで、その多様さに圧倒される)
思い切りの良さ。
そう言えば初めて安藤さんが筆を取ったときも、指導に当たった先生から「線の強さと勢いが良い」と褒められたそうだ。
それが水墨画を本格的に学ぼうと思うきっかけでもあったそう。
(中央美術学院時代の恩師姚舜熙先生と)
中原:中国で中国の伝統文化をやるっていうのは…それは、どういう立ち位置なんでしょう?中国人との競争…ですか?それともちょっと違ったポジションとか?
安藤さん:中国に居るって言うことは、やっぱり中国画の中国人の中で勝負。本場なので、やっぱり本場でどれだけ自分の作品でやっていけるかって言うのが自分の中での勝負ですよね。中国画って日本とかでも描かれてたりするんですけど、技術的なものとかを見ても、本場なので中国のほうが高いって私は思っていて、その中で切磋琢磨しながらやっていけたら本物かな、とは思ってます。
(大型の作品も数多く制作している)
「運命に引っ張り上げられて来てる」自らの水墨画人生をそう表現する安藤さん。
しかし彼女の言葉を聴いていると、その『運命』を手繰り寄せたその人こそが安藤さん自らなのだろうと感じる。
そしてそう思わせる芯の強さが、彼女の言葉の端々から伝わってくるのだ。
(バリエーションに富んだ花々)
中原:やっぱりそうした中でやっていくっていうのは、イヤになることもあるんじゃないですか?
安藤さん:結構…常に軽いスランプには落ちてます(笑)。今までは趣味の延長線で、好きで絵を描いてたんですけど、それがどこかのちょっとしたきっかけで職業になって、画家としてやってますってなった時に、相手が欲しいもののニーズに応えなければならないって事が出始めて、そのときに自分の描きたいものと相手が求めているもののギャップを感じて。それで結構葛藤があった時とかもあって。
(注文を受けて最近完成したばかりの色鮮やかな作品)
葛藤や落ち込みを繰り返しながら、11年の時を水墨画の世界で生きてきた安藤さん。
そのたくましさとは裏腹に、きっとたくさんの涙も流してきたのだろう。
それでもこの道を生きることをあきらめなかった。
今彼女は、人間国宝である韓美林氏の元で新たな水墨画の世界に挑もうとしている。
(石碑に書かれているのは韓美林氏の書)
「韓先生に師事して変わった事は?」と彼女に聞いたところ、安藤さんはこう答えた。
「一流の本物の芸術家としての立ち振る舞いや、人間性など勉強になることが多いです」。
(現在の師である韓美林氏と)
作品や作風のみでなく、何よりも師として韓先生の人柄に惹かれ、心から尊敬している事がひしひしと伝わる言葉だ。
写真からも伺える韓氏と安藤さんの師弟の絆。
それは紛れも無く、彼女の生き方と安藤美香という人間そのものが引き寄せた縁でもある。
将来像を彼女に尋ねてみると、「漠然としてるんですけど…」と言う。
強かったり弱かったり、こうしてのんびり構えているかと思えば、大胆に決断を下して道を選んできた安藤さん。
こうした彼女の生き方を今回、ほんの少し垣間見ることで、勇気をもらえる人も居るのではないだろうか?
安藤さん:身近な目標であれば、来年当たりに北京で個展を開きたいなって思っていて、今それに向けてちょっとずつ作品を準備しています。今本当に手元に作品が無くて。去年の展覧会で持ってた作品はほとんど売ってしまって、生活費とが学費にしているので…新しい環境に移って、制作できる環境になったので、作品をいっぱい作って増やして行きたいな、と思います。
そう屈託無く笑う安藤さんは、間違えなく「美人すぎる」水墨画家だ。
実力と度胸を兼ね備えた安藤美香さん。
今後も彼女の動きに注目していきたいと思う。
(取材:山下哲弥、取材/文:中原美鈴)
「これからの中日交流を支える若者たち」第六弾、来週の第四回は山下記者の力作映像をどんとお届けします。文章では伝えきれない安藤さんの魅力がたくさん詰まっていますので、どうぞ皆さんお楽しみに!
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