北京
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23/19
中国とも深い絆で結ばれていた世界的指揮者の小澤征爾さん(1935-2024)を記念するコンサートが5日に北京の中央歌劇院で開催されました。呼びかけ人は19歳から小澤征爾に師事し、アシスタント・コンダクターまで務めた中国の指揮者・俞潞(ユー・ルー、35歳)さんで、演奏は蘇州オーケストラでした。
演奏風景
特別ゲストとして登壇した小澤征爾の長女・征良さんは、「父は、音楽には人々を結び、心を動かす力があると生涯にわたって信じてきた」と英語であいさつし、「音楽の伝承に」という意味を込めて、父親が生前使用していたベートーベン「交響曲第5番」の総譜をユー・ルーさんに手渡しました。この曲は小澤征爾さんが初めてユー・ルーを指導した時の曲でもあるそうです。
小澤征良さん(右)からの総譜を手にしたユー・ルーさん(左)
コンサートでは、元々は中国の伝統楽器二胡の名曲として知られる「二泉映月」(作曲:華彦鈞)、(仏)ジュール・マスネの「タイスの瞑想曲」、(独)ベートーベンの「交響曲第5番」の3曲が演奏されました。このうち、「二泉映月」は、小澤さんが1978年に北京で初めて耳にし、涙を流した曲です。小澤征爾さんとも共演した、中国を代表するヴァイオリニストの一人である劉雲志さん(現在・中央歌劇院院長・アートディレクター)、日本からはいずれも小澤さんと深いつながりがあるハープ奏者の篠﨑和子さん、ヴァイオリン奏者の豊嶋泰嗣さんが特別ゲストとして参加し、演奏に加わりました。
ユー・ルーさん
小澤さんは1935年に中国の瀋陽で生まれ、1歳で家族と共に北京に移住し、1941年まで旧市街地の新開路胡同69号院に住んでいました。中国に深い思い入れがある小澤さんは1979 年3月、当時音楽監督を務めていたボストン交響楽団を率いて訪中公演を行い、中米音楽外交の幕を開けた指揮者としても知られています。後進の指導に熱心で、小澤征爾音楽塾などを通じて、中国の指揮者も含む数多くの指揮者がその恩恵を受けました。
今回の記念コンサートに合わせて、長女の征良さんは10歳の息子をつれて訪中し、北京の新開路胡同69号院を訪ね、父親の中国での足跡を偲んでいたそうです。
なお、今回の記念コンサートは北京中演四海文化伝播有限公司が主催し、中国人民対外友好協会、中国日本友好協会が後援して開催され、約600人が出席しました。(記事:王小燕、校正:坂下)
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