北京
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23/19
「中国の日本学研究と日本の中国学研究」と題する国際学術シンポジウムが26、27の両日、北京外国語大学で開催されました。中日両国の大学に在籍する中国、日本、米国、韓国出身の学者ら100人余りが参加したこのシンポジウムでは、相手国を研究する上での客観性および相互参照と交流の意義が強調され、世界文明のさらなる向上に向けて、アジアからの知恵を生かそうという問題意識が共有されました。
開幕式では、北京外国語大学の丁浩副校長が、中国の日本学研究と日本の中国学研究の間で交流を深めることは、「双方が経済、貿易、科学技術などの面で協力する上で有益な参考点を提供し、両国の国民間の友情を深めるために新たな貢献をすることができる」と期待を寄せました。
シンポジウムでは基調講演、文化と経済にフォーカスしたサブフォーラム、同時開催された11の分科会のほか、中日双方の学者によるパネルディスカッションなどが2日にわたって行われました。
特別報告のセッションでは、日本に留学した近代中国知識人の精神史が専門の北京日本学研究センター元主任教授の厳安生氏が自身の研究人生を振り返り、文化にある「無用の用」を心がけて幅広く読書するよう勧め、「教科書にこだわるよりも、考古学者のように、現場で実際に起きたことに着目して歴史を研究するよう」後進たちを激励しました。
パネルディスカッションの部では、「中国の日本学研究と日本の中国学研究」をテーマに、6人の学者が議論を深めました。
天津外国語大学の修剛教授は、中国や日本の相手国についての研究において、「相手を客観的に見る目」「相手国の目」「世界の目」が必要だと訴えました。
比較文学が専門の北京語言大学の周閲教授は、相手国での実体験に基づく客観的な研究の重要性を唱え、中日関係の現状を打破するには、「交流と、民間の研究と政府系研究の結合」が必要だと指摘し、とりわけ、互いに交流し合い、影響し合ってきた歴史を掘り下げて研究すべきだと主張しました。
京都に拠点を置く国際日本文化研究センターの鈴木貞美名誉教授は、現代の学問体系が国民国家を前提に構築されている現状について、「東アジアで国民国家ができる以前に、公用語としての漢語があった」と指摘し、研究における「自己相対化」の重要性を訴えました。
日本の東北大学文学研究科の佐藤弘夫名誉教授は、アミニズムを土台とするアジアの古来の知恵は、「欧米が主導してきた近代の人間中心主義の課題を浮き彫りにするとともに、東西二つの文明を止揚してより高い場所へ引き上げていく原動力となるに違いない」と期待を寄せました。
国際日本文化研究センターの劉建輝教授は、「この200年近い東アジアの文学や文化を簡単に一国史に切り分けてしまっては、真の歴史過程を再現することができない」と切り込み、「近代東アジア200年史観」に基づく中日文化相互研究の再構築を唱えました。
パネルディスカッションでは、共同研究の重要性も強調され、東京大学東洋文化研究所の園田茂人教授は、「相手側の知識欲にも応えられるよう、素養を身につけて共同研究をする」よう提唱しました。
なお、中日両国の学者に対話の場を提供することを目指す今回のシンポジウムは、北京外国語大学が主催し、東京大学東洋文化研究所と日本国際交流基金会が後援しています。(取材:王小燕、校正:坂下)
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