北京
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中国南部の広東省にある中山大学医学院の施莽教授チームと阿里雲(アリババクラウド)の李兆融氏チームは人工知能(AI)技術をウイルス鑑定に応用し、従来の研究方法では発見できなかったウイルスの「ダークマター」を発見し、ウイルス学研究の新たな道筋を見出しました。関連する成果はこのほど、国際的な学術誌の『セル』に掲載されました。
従来のウイルス発見方法にはウイルス分離やライフサイエンス分野での生物学的なデータをコンピューターで解析するバイオインフォマティクス分析がありましたが、既存の知識に大きく依存しており、また、RNAウイルスという高度に分化し、種類が多く、かつ変異しやすいウイルスでは識別率が低いなどの問題があります。
新たな研究では、チームが開発したLucaProt(ルカプト)人工知能アルゴリズムに、ウイルスと非ウイルスのゲノム配列をディープラーニングさせ、データセット内でウイルス配列を自ら判断できるようにしました。チームはこのアルゴリズムを利用して、世界の生物環境サンプルからの1万487件のRNAの解列データの中から51万以上のウイルスゲノムを発見し、16万を超える潜在ウイルス種と180種のRNAウイルスの大規模分類グループを特定しました。このことで、世界のRNAウイルスの多様性が大幅に拡張されました。うち23の大規模分類グループは配列の相同性による手法では識別できず、ウイルス界の「ダークマター」と呼ばれていました。
施教授は、「AIのアルゴリズムモデルは、人がこれまで見落としていた、あるいはまったく知らなかったウイルスを掘り起こすことができる。この能力は疾病の予防や抑制、新たな病原体の迅速な識別にとって極めて重要だ。特に感染症が爆発的に広まった発生した場合には、AIのスピードと精度が科学者が隠れた病原体をより迅速に特定することに役立つ」と説明しました。(非、鈴木)
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