中日の若手研究者が北京で座談会「等身大の相互理解」の重要性を確認

2024-09-11 21:03:05  CRI

 

会場の様子

 中日双方の若手研究者24人が参加した座談会が北京市内で10日午後に行われました。主催は公益財団・日中友好会館で、中国社会科学院日本研究所が協力しました。座談会では双方の参加者のいずれもが、等身大の相互理解の重要性を指摘しました。

中国社会科学院日本学研究所の楊伯江所長(中央)

 中国社会科学院日本学研究所の楊伯江所長が座談会に先立ってあいさつし、「中日関係にある対立を解消し、相違を乗り越えるには、問題と向き合い、相手を知ることが第一歩だ。率直な交流を通じて、基本的な相互信頼関係は確立できると信じる」と述べました。

グループ別討論の様子

 座談会では、参加者たちは相手国への訪問で実感したことや、専門分野から認識した両国関係について発表し、グループ別の討論も行われました。

中国社会科学院民族文学研究室主任の意娜さん(中央)

 8年前に訪日した中国社会科学院民族文学研究室の意娜主任は、日本で見学したコンテンツ産業に的を絞り、中国のネット大手の騰訊控股(テンセント)が2021年に、日本のエンターテインメント大手のKADOKAWAの出資額が第3位の株主になったことを例に、両国企業の協力が緊密になりつつあると指摘しました。さらに、中国の古典の『西遊記』を土台に数多くの人気作品やゲームが中日両国で作られてきたことに触れ、「中日両国は文化コンテンツ産業での協力を深めることにより、世界の文化の多様性により多くの東洋の知恵を注ぐことができる」と、双方の協力を高く評価しました。 

久留米大学法学部講師の橋本誠浩さん(中央)

 国際政治が専門の久留米大学法学部講師の橋本誠浩さんは今回の活動に参加した心境について、「研究者として、各自の学術的な関心から等身大の中国を理解したい」と説明し、「ニュースやインターネットを通じてでは見えない中国の姿について知ることが、私たち日本を代表する研究者として、今後、大きく成長する糧(かて)になると思う」と意気込みを語りました。 

中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の謝来輝さん(右)

 同じく国際政治を研究する、中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院一帯一路研究室の謝来輝さんは、2016年に東京と徳島を訪問したことを振り返り、「多くの友人ができ、たくさんの善意をいただいた。自分のその後の国際関係の研究について重要なことを気づかせてくれた旅でもあった」と説明しました。謝さんは、国家間の競争は否定できないと論じた上で、「競争の目的はあくまでも、人類により大きく貢献し、世界により多くの公共財を作り出すことに置くべきだ」と強く訴えました。さらに、現状で主流である国際政治理論は西欧の近代化の歴史に基づいて構築されたと指摘し、「東アジアの国としては、欧州とを結ぶシルクロードを通じて長期にわたって平和と繁栄を築いてきた自らの歴史を振り返り、平和と協力、開放と包摂、学びあい、互恵ウィンウィンに基づいた世界秩序の構築で力を合わせるべきだ」と訴えました。

日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センターの山田浩成研究員(右)

 現代中国法と環境資源保護法が専門の日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センターの山田浩成研究員は、北京留学で覚えた流暢な中国語を使って発表しました。山田さんは、日本では701年に唐の法体系を参考に「大宝律令」が完成された歴史にさかのぼって、法整備についての中日交流史を振り返りました。山田研究員は環境関連の法律について、中国で2010年以降に環境保護法が速やかに整備されたことや、環境公益訴訟、生態環境損害賠償など新制度の導入、公務執行での情報技術やAIの応用が、日本の環境関連の法の研究に多くの啓発を与えたと指摘しました。さらに今後の方向性について、「過去の交流を踏まえ、新しい問題への対応で共に学び合い、解決案を探すこと。法の研究とデータ科学、人工知能(AI)を結び付けて、法律の施行と適用を全面的に研究すること。データと文献の国際流通と共有の強化」などと論じました。

Wechatを交換する中日双方の参加者

 中国社会科学院と日中友好会館との交流は2010年に始まりました。日本政府の対外交流プロジェクトであるJENESYSの一環として実施された同交流プロジェクトにより、日本に招かれた中国社会科学院の若手研究者は、これまでに延べ600人に上りました。2019年からは、日本側の要請を受けたことで、中国社会科学院が日本の若手研究者を中国に招く事業を始めました。新型コロナウイルス感染症のために対面交流を見合わせた期間もありましたが、6回目となった今回の交流では、大学や研究機関、シンクタンクなどに在籍する40歳以下の日本人研究者を対象に公募を行ったところ、14人の参加が決まりました。訪中期間は5日間で、北京市での活動以外にも、河南省鄭州市でのスマートシティー建設の視察なども盛り込まれているとのことです。(取材&記事:王小燕、校正:鈴木)

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