北京
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今年は中国中部湖南省長沙市にある紀元前2世紀の馬王堆漢墓の発掘調査50周年にあたります。湖南博物院はイタリアのローマ文化遺産監督管理局と「かの美しき人よ:漢・ローマ期女性文化財展」(会期は10月7日まで)を共催中です。数々の展示品のうち、辛追夫人の「曲裾式素紗単衣」という国宝級の文化財についてインターネットでは「盗まれて破壊されたのではないか」「これは本物なのか、レプリカなのか」と疑問が寄せられ話題になっています。
△湖南博物院所蔵の曲裾式素紗単衣
これに対して、湖南博物院はこのほど、「曲裾式素紗単衣が盗まれたことはない。出土時にやや破損があったため、これまで文化財倉庫で入念に保管してきた」と表明して、「盗難説」をデマとして否定しました。曲裾式素紗単衣を初めて公開したことには、馬王堆漢墓の考古学発掘50周年を記念すると同時に、デマや誤った情報を払拭する意図もあるとのことです。
馬王堆漢墓から辛追夫人の所有物とされる素紗単衣は2点が出土しました。うち1点は裾が直線的な直裾式と呼ばれる形状で、重さは49グラムです。この1点は盗まれたことがあり、取り戻された後に館内の馬王堆漢墓常設展で展示されています。一方、今回初公開された素紗単衣は曲裾と呼ばれるタイプで、着丈160センチ、袖丈は195センチと、着丈と袖丈がいずれも直裾よりやや大きめであるにも関わらず、もう1点の直裾のものよりも1グラム軽く、わずか48グラムしかありません。
素紗単衣は今まで発見された中で、最も早い、最も薄い最軽量の服装であり、前漢時代(紀元前202~紀元8年)の紡績技術の頂点を代表する文化財です。出土場所は馬王堆1号漢墓、つまり辛追墓から出土したものです。史料によれば、辛追は今から2200年以上前の人物で、前漢の長沙国で丞相(宰相)を務めた相利蒼の妻でした。50歳前後で死去したとのことです。
湖南博物院馬王堆漢墓所蔵品研究展示センターのスタッフによると、直裾と曲裾の最大の違いは襟の長さと着用方法で、曲裾の襟は長く、一旦背中を回した後に体の前で結びます。
今回の展示会では、曲裾式素紗単衣のほか、辛追墓T形帛画の原本など馬王堆から出土した他の貴重な文化財も初公開されました。湖南博物院の最新情報によると、馬王堆漢墓からの出土品はこれまでに、計2万6000点を超えたとのことです。(ZHL、鈴木)
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