北京
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23/19
中国人研究者が著した、日本の「失われた30年」における経済対策を扱った新刊の出版記念会が、北京市内の中国社会科学院日本研究所で12日に開催されました。出席した研究者はいずれも、中国経済が「日本化の道」をたどっているとする論調を否定する一方で、日本を含めた諸外国の経済対策を研究することの意義を指摘しました。
筆頭執筆者である同研究所の閆坤(えんこん)副所長によれば、成長スピードの減速や不動産市場の低迷などを理由に、数年前から、中国経済は「バランスシート不況」に陥り、日本の「失われた30年」と似たような危機にあるという論調が台頭しています。そうした中で、同研究所は民間のシンクタンクの京東経済発展研究院と、中国経済の動向を全体的に把握し、成長における困難と試練を洗い出して、質の高い発展に向けた政策提言を可能にすることを念頭に共同研究を行い、今回出版した書物がその成果物とのことです。
執筆者の一人である中国社会科学院財経戦略的研究院の劉誠副研究員は席上、「日本的景気後退」の特徴として、低成長の長期化、バランスシートの縮小、消費の低迷、人口減と高齢化、輸出への高度依存などを挙げました。劉副研究員はその上で、「中国の経済成長は下振れしており、懸念される課題はあるが、全世界の技術環境、自国の産業基盤、市場規模などにおいて日本の状況と大きな異なっており、一層の強じん性と発展の空間がある」と指摘して、中国経済が「日本的景気後退」に陥ることはないとする見方を示しました。
一方で、閆副所長は諸外国を研究することの意義について、「中国も日本も東アジアにあって、世界の主要経済国だ。『日本的景気後退』の形成過程や政府と企業の対応の仕方などには、中国にとって鏡のような役割を期待できる」と述べました。また、同研究所の楊伯江所長は、「中国経済は構造転換の重要な時期にあり、政治や経済を取り巻く国際的な環境の悪化に、景気循環による構造的矛盾が合わさり、リスクが依然として残っている。中国経済は『日本的景気後退』に陥ることはないが、日本を含めた諸外国の政府や企業が対応した際の経験と教訓は、重要な参考価値がある」と指摘しました。(取材・記事:王小燕、校正:鈴木)
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