北京
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拓殖大学大学院 田中修客員教授
中国ウオッチャーで、拓殖大学経済学研究科の田中修客員教授は9日、中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)の取材に応じて、全国人民代表大会(全人代)で発表された2024年度の政府活動報告中の経済対策などを論評しました。田中教授は、政府活動報告が一連の経済対策で需要と供給の組み合わせを重視したことを高く評価し、「中国経済の日本化」という論調に否定的な見解を示しました。
田中教授は2024年度政府活動報告の全般的な印象として、「民営企業、消費者の自信や気力、活力を高めるべく、経済振興に力点が置かれている」ことを挙げました。また、「内需拡大という需要面だけでなく、サプライサイドの構造改革の深化という供給面の質の向上との組合せを重視したことは慧眼だ」と評価しました。
中国では2023年7月以降、民営経済の発展や壮大化の促進、消費の回復と拡大、外資の誘致強化、不動産市場への金融支援などといった景気テコ入れ策が次々に打ち出されました。さらに同年10月には国債の1兆元増発も決定しました。田中教授は、今回の政府活動報告は「基本的にこの流れに沿ったもの」と指摘し、とりわけ別枠で数年連続超長期特別国債の発行という財政政策に注目しました。「23年に国債増発で得た1兆元の資金の大部分が24年に繰り越され、中央予算内投資や地方政府特別債も増額されたので、財政資金の供給はかなり潤沢になった」と指摘し、「(経済対策では)財政の持続可能性を考慮しつつ、最大限の努力をしている」と評価しました。
田中教授は一方で、「中国経済の日本化」という論調に対して、いわゆる経済の「日本化」とは、高齢化と人口減少による成長率の低下以上に、バブル崩壊以降に成長力が一向に回復せず、企業家精神が失われ、イノベーションの新しい波にもうまく乗れず、公共事業や低金利、円安、大型イベント、インバウンドに依存する「他力本願経済」に陥った現象を指すと、定義を明確にした上で、「中国経済は今のところ、“日本化”をうまく避けているのではないか」との見方を示しました。そして、中国が求める「質の高い発展」の推進にはイノベーションによる生産性の向上が不可欠で、そのためにも政府が掲げている「民営経済の発展と壮大化の促進」によって、民営企業家の「アニマルスピリット」を発揮させることにかかっているとの見方を示しました。(取材・記事:王小燕、校正:鈴木)
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