【観察眼】中国の全人代と政協はGDPと国防費を議論するだけの会議なのか?

2024-03-05 17:51:15  CRI

 中国で年に一度の政治イベント、全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)の年次総会が相次いで開幕した。

 政府活動報告が発表されると、案の定、日本を含む西側諸国の多くのメディアが例年のように中国の経済成長目標と国防予算だけに注目して報道した。一部には、この2点を必要以上に掘り下げ、大げさに騒ぐ記事さえある。

 本日(3月5日)発表された政府活動報告には、中国の食糧生産、生態環境整備、人工知能(AI)の発展、外資へのサービスの保障、外国人の訪中の利便性向上など、各国にかかわる多くの内容が盛り込まれているのだが、西側メディアの皆さんはこれらの情報に少しも関心を持っていないのだろうか?

 国民の知恵を集め、民意を反映し、民生に影響を与える重要な政治の場である全人代と政協の年次総会の内容は非常に豊富である。政府活動報告を含む一連の計画報告、予算報告、法律草案などを審議するほか、各業界から来た全人代代表と政協委員は、過去1年間に中国各地での実地調査などによって集めた民衆の声を議案、提案などの形にしてまとめ、全体討論などを通じて問題解決の方法を探り、最終的には関連の法律法規、政策措置の制定と調整につなげていく。

 全人代代表と政協委員らが今年、どの分野のどのような問題を訴えているのか、西側メディアの皆さんも注目してみてはいかがだろうか。

 いくつか例を挙げると、例えば、子どもが出稼ぎに行った農村の高齢者の介護問題について、全人代代表で河南省開封市蘭考県の村の幹部である陳保超氏は今年、農村の高齢者介護施設への資金支援を拡大し、さまざまな形で高齢者向けマンションを建設して、高齢者が互いの面倒を見合うことを支援する仕組みを提案した。

 政協委員である中国気象局科学技術・気候変動局の張興贏副局長は、早期警報能力を全面的に高め、国民全体の防災・減災レベルを引き上げることを提案した。

 全人代代表、遼寧省朝陽県の村の幹部である王穎氏は、農村の子どもへの芸術教育を強化し、都市部と農村部の教育格差を縮小することを提案した。

 また、全人代代表、貴州省黔西南州のプイ族の服飾に関する無形文化遺産の伝承者である李利氏は、無形文化遺産の技術を伝承し発展させる人材育成について、今年の会議で積極的に提言したいと述べている。

 代表や委員たちが毎年提出する大量の訴えがきちんと返事をもらえているかどうか、西側メディアの皆さんは気にならないだろうか?

 いくつかデータを見てみよう。昨年の年次総会期間中、全人代代表からは271件の議案が提出されたが、そのすべてが全人代の9つの専門委員会によって審議された。また、代表たちが提出した8314件の提案は、204の機関によってすべて処理され、その結果についての説明も行われた。また、昨年の政協会議以来、委員たちは計5621件の提案を提出し、審査を経て4791件が受理され、今年2月末までに99.9%が処理済みとなった。昨年、各政府機関は代表や委員が提出した提案を約4700件採用して関連問題の対策や措置を2000項目余り打ち出し、国の改革や発展、国民の日常生活にかかわる一連の問題の解決を推進した。

 全人代と政協の年次総会で民衆のために声を出し、人々の関心事に応えるルートはほかにも多くある。例えば、全人代と政協の年次総会で数年前に相次いで設置された「部長通路」「代表通路」「委員通路」と呼ばれるぶらさがり取材エリアだ。これらは一般市民に、政府機関の責任者や全人代代表、政協委員らと直接対話する機会を提供した。北京の人民大会堂内に設置されたこれらの取材エリアでは、中国の各政府機関の責任者や全人代代表、政協委員らがオンラインとオフラインの両方でメディアや一般市民(ネットユーザー)からの質問を受け、教育、雇用、医療など各分野の話題について説明を行っている。今年の取材エリアでの質疑応答を、西側メディアの皆さんも関心を持って見てみてはいかがだろうか。

 全人代と政協の年次総会は、世界が中国の民主政治と経済・社会の発展を観察するための重要な窓口ともいわれる。この窓から見える風景は“GDP成長率”や“国防費”だけではなく、豊富で多彩なものである。この二つの年次総会を通して中国を理解しようと真に思うのであれば、その“窓”から遠く離れて見たり、斜めから見たりしてはならない。そうではなく、色眼鏡を外して窓に近づき、そこから見える風景の中に入ってみることが必要なのである。(CMG日本語部論説員)

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