北京
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ウナギは日本人が好む高級食材だ。中国の福建省では多くの水産養殖業者がウナギを養殖して日本に輸出している。活魚の遠距離輸送であるために、ウナギの生存率の確保が課題だ。養殖業者らは長年にわたる実践を通して、ウナギのケースの中にナマズも入れるという経験を得た。ウナギとナマズは共に攻撃性の本能が強い魚類で、ウナギはナマズの攻撃への反撃を強いられる。そのことでウナギの生存本能が十分に活性化し、輸送中に生き残るようになる。ナマズにより、ウナギに生気と活力がもたらされたのだ。この冬には、このようなナマズが中国の観光市場に進出した。注目を集めている中国東北地方のハルビンだ。
黒竜江省の省都ハルビンは中国で最も緯度の高い省都であり、冬季の平均温度はセ氏氷点下18.0度-同7.0度だ。ハルビン市は日本の北海道札幌市と同様に、毎年冬には独特の氷雪の風景で観光客を引きつけてくる。それでもこの冬は例年と様相が異なる。というのは、ハルビンをはじめ黒竜江省の各都市の観光業が爆発的な成長を見せているのだ。オンラインでもオフラインでもハルビンは中国人全体の注目と議論の焦点になった。ハルビンはまさにこの冬の「インフルエンサー都市」だ。
ハルビン観光の最大の目玉は、なんといっても「氷雪大世界」だ。暖かい中国南部からの観光客は、この氷と雪で作られた幻想的なテーマパークに夢中になる。「氷雪大世界」はハルビン市政府が打ち出した氷雪芸術の大型プロジェクトだ。25回目の今年は、面積が81万平方メートル、使用した氷と雪は25万立方メートルと、過去最大規模になった。中心部にあるメインタワーの「氷雪の冠」は、16階建てのビルに相当する高さ43メートルだ。ネットで人気沸騰の14本のスーパー氷滑り台は、最長のものが521メートルで、利用客は40秒余りをかけて、7階建ての高さに相当する最上部から地上に滑り降りる。ハルビン氷雪大世界は2024年1月、世界最大の氷雪テーマパークとしてギネス世界記録に登録された。
「氷雪大世界」の設営にハルビンの人々の巨大な創造力と勤勉さが見られるというならば、観光客に対する行き届いた心配りはハルビンの人々の気配りと情熱のたまものだ。中国は南北の温度差が大きいので、飛行機でハルビンに着いた多くの観光客は、まずは着替えねばならない。観光客の便宜のため、ハルビン空港には着替えのための小部屋が設置されている。観光客はトイレで長時間待つ必要はなく、公共の場所で着替える気まずい思いも避けられる。ハルビンの親切さは中国全国に評判がとどろいているが、今は観光客を接待するために、「全市総動員」の状態だ。ハルビン市民は南部から来た観光客を「じゃがいもちゃん(小土豆)」と親しげに呼び、よりよい観光体験をしてもらうために、メインストリートである中央大街の地下通路にはカーペットを敷き、熱心なボランティアが黒糖とショウガを煮出した熱々の「紅糖姜茶」を無料で振る舞う。さらに観光スポットから観光スポットに移動する際には、地下鉄が無料で利用できる。また南部から来た観光客の食習慣に合わせてハルビンの地元の食べ物には一工夫を追加する。例えば焼きいもにはスプーンを添える、柔らかい豆腐の軽食である豆花は甘い味にするなどだ。
黒竜江省文化・観光庁の何晶庁長は2日、取材に対して「ハルビンの人気がこの冬に爆発したのは偶然でない。1年をかけて準備をしてきた」と述べた。氷雪シーズンに合わせて100のイベントが企画して、観光客に豊かな体験を提供するとともに、サービスの質を高めた。観光客に「カネを使っただけの価値はあった」と感じてもらい、ハルビンにまた来たいと思ってもらえる工夫をしてきた。多くの人の努力と苦労が実り、ハルビン市は元日の3連休中に累計304万7900人の観光客を迎え、観光総収入59億1400万元(約1200億円)に達して、いずれも過去最高だった。冬の観光のもう一つの人気の旅先である暖かい海南省では、観光客の受け入れが延べ171万7100人、観光総収入は24億600万元(約480億円)で、両者には大きな差がついた。
ハルビンは、この冬観光市場に入ったナマズのように、生気と活力をもたらした。ハルビンの人気爆発によって黒竜江省の他の都市の観光も促され、チチハルや漠河などでは予約が増え続けている。また南部からの観光客はハルビン観光から帰郷すると、地元の観光部門に、ハルビンに見習って地元の特色を十分に開発するよう求めるようになった。しばらく前には山東省の淄博がバーベキューを目玉にして観光客を大いに呼び込んだ。そして次はハルビンの人気爆発だ。そして中国人は、次のナマズがどこに現れるのか楽しみにしている。中国経済の特色の一つは、新しいナマズが次々と現れて生気と活力をもたらすことだ。(CMG日本語部論説員)