ALPS処理汚染水差止弁護団の河合弁護士「まずは汚染水発生を止める根本策を」

2023-12-22 13:55:02  CRI

 ALPS処理汚染水の海洋放出の差し止めを求める訴訟の弁護団共同代表を務める河合弘之弁護士は21日夜に開かれたオンライン講演会で、過酷事故(設計時の想定をはるかに超える事故)により壊れた原発に由来するトリチウム水の海洋放出は世界初であり、「道徳違反」であり、「日本のイメージを損ねる」と指摘して、「まずは汚染水の発生を食い止める根本策を打つべきだ」と訴えました。

 河合弁護士は講演の中で、日本政府と東電による「事故を起こした原発から燃料デブリを全て取り出すための保管場所を確保したいので、溜まっている汚染水を放出して、今あるタンクで間に合わせる」という理由に対して、「不可能なことをうそで固めた」と痛烈に批判しました。

 河合弁護士はまず、デブリを取り出せるかどうかについて「メルトダウンを起こした原子炉では、核燃料は溶けて周囲の格納容器や圧力容器などにへばりついている。デブリは地球上の固形物の中でも最も硬いとされ、その量は880トンに達するとも見積もられている。事故から12年経つが、これまでに取り出せた量は数グラムに止まっている。良識ある科学者はすでに、デブリの取り出しは無理だと言い出している」と明かしました。

 河合弁護士は次に、現在も毎日、新たに汚染水が発生し続けている現状について、「急務はその発生を食い止める根本策」と訴え、現在の凍土壁の代わりに鉄やコンクリートで地中30〜50メートルの深さまで壁を作り、斜面の上から流れてくる地下水を原子炉の中に入れないようにすると同時に、原子炉の冷却用に使う海水を循環させ、熱で蒸発する分だけの追加にとどめていく対策を提案しました。

 河合弁護士は、「原子炉の通常の運転により発生する使用済み燃料と、事故によってデブリになってしまったものとは、危険性が根本的に違う。それに触れた水も危険性が違う」との認識を示し、「世界で過酷事故由来のトリチウム水を海洋に流した国は日本しかない」と指摘しました。河合氏はこのような行為を「道徳違反」と指摘し、「ルールを守り、清潔好きな国民」という日本人のイメージを損ねる「国益を害する」行為と批判しました。

 河合弁護士はさらに国際法の視点から、放射性廃棄物の海洋への投棄を全面的に禁止したロンドン条約1996年議定書や、海に汚染物を流すことを禁止する法律の立法義務を課した国際海洋法条例にも違反する可能性を指摘しました。

 そのうえで、「日本の原子力行政は海洋放出が一番安上がりの案だと思い込み、その実行に向けて数年にわたって周到な準備をしてきたが、ここに来て、放流するための構造物の工事費や、漁業関係者への補償金などもコストに加算すれば、当初の見積通りのものに決してならないことにすでに気づいているはず」と切り込みました。

 講演の最後で、河合弁護士は「デブリは取り出して県外に持ち出して、事故のあった原発の敷地内を完全に綺麗な芝生にして、事故からの回復を演出するというストーリーには無理がある」と強調し、政府に方針変更を促すよう、一人でも多くの市民が福島第1原発事故処理のその後に関心を持ち続けるよう呼びかけました。

 なお、河合弁護士は神奈川県日中友好協会経済文化交流部会が主催した第38回日中民間交流対話講座の招きを受け講演を行いました。同講座は新型コロナウイルス感染症の影響で、それまでは毎月オフラインで実施されてきた「日中経済文化講座」を土台にして開設されたオンライン交流会です。(記事:王小燕、校正:鈴木)

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