北京
PM2.577
23/19
北京で9日、中国社会科学院日本研究所と日本国際フォーラムが主催する「中日ハイレベル・シンクタンク学者対話」が開催されました。両国のシンクタンクの代表が参加したこの対話会は、国際情勢の変動期における中日の平和維持と繁栄促進の共通責任にフォーカスしたもので、中日首脳のサンフランシスコ会談の精神と方向性を踏まえ、「トラック2(民間対話)」による両国関係の安定的かつ健全な発展を促すための重要な行動として位置付けられています。
開幕式では、中日双方の関係者6名が挨拶しました。
中国社会科学院国際合作局の姚枝仲局長は、「中日は『中日平和友好条約』締結45周年記念を契機に、条約の精神を再確認し、その中で定められた義務を厳守し、『互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない』という政治的共通認識を堅持すべきである」と指摘し、「中日関係の安定的な発展には、理性的な理解・認識のための土台づくりと世論形成が必要だ。そのためにはシンクタンクが先導し、率直で踏み込んだ対話、建設的なコミュニケーションを続けていく必要がある」と述べました。
日本国際フォーラムの鈴木馨祐評議員(衆議院議員)は、「中国と日本は国際政治の中で極めて大きな影響力を持つ国として、地球規模の課題の解決にまい進していくことが本来の姿」と述べたうえで、「両国の長期的利益を考えれば、紛争のない、安定した状況を作り出すことが極めて大事」だと指摘し、学識者からの建設的な議論に期待を寄せました。
中国国際交流協会副会長・中連部元副部長の劉洪才氏は、「平和、発展、信頼、ガバナンスの赤字が世界にもたらした課題に対し、中日双方は手を携えてその解決に努め、人類運命共同体の理念に基づいて、より美しい世界の構築を推進するべき」と強調しました。
日本の元国務大臣・経済企画庁長官の船田元衆議院議員は、「丁寧な対話の欠如」を最近の日中間に存在する課題としてあげ、「互いに最善を尽くす努力の必要性」を指摘した上で、「ブロック経済は世界の富を縮小させるばかりか、安全保障そのものにも悪影響を及ぼす」との懸念を示し、日本や欧米が経済安全保障の名の下で対話を閉ざすことのないよう配慮すべきだと訴えました。
衆議院議員の緒方林太郎氏は、「日中は意見の相違を効果的にコントロールし、積極的に歩み寄り、両国関係の予見可能性を高め、最終的に双方の共同発展の実現を推進していくべきだ」との考えを示した。
中国社会科学院日本研究所所長・同院東海問題研究センター主任の楊伯江氏は「陣営の対立に活路はなく、平和共存、互恵協力こそが唯一の正しい選択肢だ。地球規模の諸問題を前に、中日は四つの政治文書の精神を指針とし、信頼を高め疑念を解消し、協力を深め、平和、安定、繁栄を守る責任を共に担うべきだ」と訴えました。
また、日本国際フォーラムの渡辺繭理事長は、日中両国の学者や研究機関は対話、理解、協力を促進する上で、重要な役割があると指摘し、「『和』を尊ぶ思想を有する日中両国が、半世紀の知恵や努力を踏まえ、対話や交流を積み重ねていくことがなによりも重要だ」と指摘しました。
開幕式に続いて開かれた基調講演の部では、4名の学者が発表を行いました。
東京大学名誉教授・日本国際フォーラム上席研究員の河合正弘氏は、「現在の国際情勢の中で、世界経済の全面的な分断を避けるには、経済的に高い依存関係にある日本と中国が『建設的で安定した』二国間関係を維持し、『戦略的互恵関係』を推進することが極めて重要だ」と指摘しました。
中国社会科学院世界経済・政治研究所副所長・国家グローバル戦略シンクタンク副理事長の王鐳氏は、「世界経済が『スローバリゼーション』へと移行し、中国経済も質の高い発展に向かう中、平和と繁栄という共通の目標を実現するために、中日はこれまでの経済貿易関係を土台に、手を携えて世界経済の変化に対応し、アジアと世界経済の発展に貢献しなければならない」と示しました。
日本総合研究所・国際戦略研究所の高橋邦夫副理事長は、「現在の日中関係は政治的相互信頼と国民の相互認識では課題があるものの、双方の国民には多くの共感点もある」と述べ、両国関係の将来について、「問題解決のプロセスでウィンウィンの関係の構築は可能」と楽観的な見方を示しました。
中国社会科学院日本研究所の呉懐中副所長は、中日関係は深刻なパラダイムシフトの真っ只中にある」とし、「中日が平和共存、相互尊重、協力・ウィンウィンの関係を築くには、共に正しい認識を確立し、意見の相違を効果的にコントロールし、互恵協力を推進し、大国としての責任をしっかりと負い、人的・文化交流を促進する必要がある」と指摘しました。
会場出席者の記念撮影
一日の日程で行われた対話では、基調講演に続き、「世界の変動期における中日の国家発展戦略」「アジア太平洋地域の秩序と中日の共通責任」「各分野の実務協力と中日関係の見通し」の3つのセッションで、20名余りの双方の学者による発表やディスカッションが行われました。なお、オンラインでの参加も含め、約100名の専門家、学者、メディア関係者らが参加したということです。(記事:王小燕、校正:鳴海)