北京
PM2.577
23/19
中国の習近平国家主席と米国のバイデン大統領がサンフランシスコで約1年ぶりに首脳会談を行ったことについて、日本の複数の学識者が中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)のインタビューに対し、「会談が実現できたことの意義は大きい」と指摘し、今後の中米関係を見据えた「5本の柱」の構築に関する習主席の提言を高く評価しました。
キヤノングローバル戦略研究所・瀬口清之研究主幹
キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹は、「米議会が民主党、共和党共に中国に対して厳しい姿勢を貫き通す中、まず会談が実現できたということの意義は大きい」と述べ、「両国が台湾問題などをめぐり武力衝突にも至りかねないようなリスクがある中、首脳同士の危機管理も含んだ相互交流、相互理解、相互尊重の場を設けるというのはとても意義がある」と評価し、双方が努力を積み重ねていくことこそが重要だと指摘しました。
東アジア共同体研究所・孫崎享所長
東アジア共同体研究所の孫崎享所長は、「世界情勢が大変な転換期にあり、大国である中米の利害が対立し、東アジア情勢が悪化している中、中米双方の首脳はいずれも緊張を緩和することを目的に会談した」と背景を分析し、「習近平主席とバイデン大統領が二国間関係をはじめ、広範な問題について意見を交換できたことは非常に良かった」とし、「軍のハイレベル交流の復活で合意した点で、軍事について互いに誤解や読み違いをしないということを作り上げた」ことをとりわけ高く評価しました。
東京大学社会科学研究所・丸川知雄教授
東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は、「米中関係を安定・発展させるメッセージにおいては、両方の首脳からかなり前向きな踏み込んだ発言があった」とポジティブに評価しました。その上で、中米は危機管理をしっかり行うことを前提に、今後は「貿易などに設けた障壁を少しずつ下げていくという前向きな展開を期待したい」とし、サンフランシスコ会談は中米が「関係修復へ向かうための第一歩にあると期待したい」と述べました。
また、中米関係の新しいビジョンに向け、相手に対する正しい認識の確立、互恵協力の推進など「5本の柱」を共に構築していくという習主席の提案に対して、3人はいずれもその内容を高く評価しています。
瀬口氏は「共に相互の違いを受け入れて尊重し合う」という提案に着目し、「中国の伝統思想・文化にある『徳治』に通じる」考え方だと指摘し、現在、法治だけに向かっている世界は、「イデオロギーの対立、経済の利害対立の深まりで、協力が十分に行き届かない状況にある中、法治プラス徳治のハイブリッドの世界秩序形成を中国が主導してほしい」との考えを示しました。また、「大国の責任を共に担う」という提案について、丸川氏は「気候変動や世界全体の繁栄、特に低所得国、発展途上国の引き上げなど世界のさまざまな危機を、中米が共同で乗り切っていくことを最も期待している」と述べました。孫崎氏は「バイデン氏も大国としての世界秩序の維持を中国と協力してやっていかなければいけないという認識に立った」との見方を示し、5つの提案は「重要な対話をしていく基礎になることを改めて米国に述べ、それが基本的には了解された」と評価しました。
一方、サンフランシスコ会談後の中米関係の動向については、3人とも来年の米大統領選の動向と絡めて見る必要があると指摘し、孫崎氏は「今回、両首脳が正しい方向を確認したとしても、それが終点ではない。今後は新しい流れを巡って米国内の動向を引き続き見守る必要がある」と指摘しました。(取材・記事:王小燕、校正:藤井)