中秋節、亡き息子の番号にダイヤルした母 受話器の向こうから温かなメッセージ

2023-10-04 15:03:30  CRI

 今年は9月29日が中秋節でした。中国で家族だんらんの祝日とされるこの日に、10年前に亡くした息子が恋しくなる母親がいても不思議ではありません。そして、ふと息子の生前の電話番号にダイヤルした彼女は、受話器の向こうから予想外の温かな言葉を受け取ることになりました。

 29日午後3時ごろ、交番で残業をしていた浙江省衢州(くしゅう)市龍遊県の警察官・王能さんの電話が鳴りました。着信表示は「安徽省宣城市」、知らない番号からでした。受けてみるとしばらく無言でしたが、やがて60~70歳ほどの女性の声が聞こえました。彼女は口ごもりながら「息子に電話したつもりで。うまく話せなくて…」と言いました。

 王能さんはまだ2年目の新米警察官です。この電話を、はじめは人捜しの問い合わせかと思い、「大丈夫ですよ、続けて」と返事しました。すると電話の向こうの女性は泣きながら、ぽつりぽつりと話し始めました。

 女性の長男は衢州市で働いていましたが、10年前に交通事故でこの世を去りました。それでも、祝日のたびにもう応答しない息子の番号に電話をかけることは、彼女の習慣として続きました。ところが、数年前に電話をかけたところ、思いがけずこの電話がつながりました。ただし、返ってきた言葉は「かけ間違いです」の一言だけ。この番号は新しい持ち主の手に渡っていたのでした。それから、女性は祝日に電話をかける習慣を我慢していましたが、今年の中秋節を迎えて、つい久しぶりにダイヤルしてしまいました。そして、この数年の間に、電話番号の持ち主は王能さんに変わっていたのでした。

 女性の話に、王能さんは心を動かされました。女性がきまり悪そうに「こうやって電話したら、迷惑かしら」と尋ねると、王能さんは「迷惑だなんて。ちょうど話す相手がいなかったので、良かった!」と答えました。実のところ、王能さんはどう彼女を慰めるべきか困っていましたが、彼はただ、彼女の話に耳を傾けることに努めました。

 夜になって、昼間の電話のことを考えて眠れない王能さんは、女性に「しっかり生きてくださいね」と励ます長いメッセージを送りました。それから2人は、「助けが必要な時や、息子さんのことを思い出してつらくなった時は、この番号に電話してください。必ずつながります!」「つらくなった時はかけさせてください。でも、邪魔をしたくないので、できるだけ我慢します。あなたがいてくれて良かったわ。ありがとう」とメッセージを交わしました。

 

 この出来事はネット上で話題になり、「今年の中秋節に聞いた、最も心温まる話」として、多くの人々を感動させました。(Mou、謙)

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