【観察眼】中国人は「ダブルカーボン」目標にどう取り組んでいるのか?

2023-09-23 15:25:00  CRI

 中国の習近平国家主席は2020年9月22日、第75回国連総会で「温室効果ガスの排出を2030年までにピークアウトし、2060年までに実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現するよう努力する」という目標(以下「ダブルカーボン」目標)を打ち出した。3年が経った今、グリーン・低炭素は中国の経済と産業の発展と個人のライフスタイルの新しい指針となりつつある。

 北京市で暮らす30代半ばの趙さんは「個人カーボン口座」を使い始めてまもなく1年だ。スマートホンにインストールしたミニアプリ「グリーンライフ・カーボン・シーズン」を立ち上げれば、デリバリープラットフォームで注文の際に「食器不要」をクリックすれば45.72g、シェア自転車に1キロ乗るごとに250g、指定されたルートでグリーン家電を購入して使用を開始すれば1回につき最大375kgの排出削減量が計上される。これらの排出削減量はポイントに換算され、映画のチケット、飲食のクーポン、シェア自転車の無料利用券や菓子類の商品券などと引き換えることができる。趙さんは、「私にとって良い動機づけです」と、愛用の理由を明かした。

 上海市で暮らす劉さんは小学生の子を持つ母だ。彼女の最近の「マイブーム」は中古品取引だ。不用になった衣類、カバン、子供のおもちゃ、絵本などを写真に撮って中古品取引の大手プラットホームの「転転」に投稿すれば、中国全国から引き合いが入る。過去半年間ですでに6000元近くの取引を完了したという。中国では近年、中古品取引がグリーンなライフスタイルとみなされつつあり、取引に参加する人は急増中だ。公開されたデータによると、2015年には3000億元だった中国における中古品取引の規模は、5年間後の2020年には1兆元を突破した。

 「転転」はさらに、SNS最大手の「テンセント」や大手商業銀行の「中信銀行」などと提携して、「カーボンポイント」などを導入して、ユーザーにポイントを還元することでグリーンな消費を提唱している。2015年末に転転集団が設立されてから2022年末までのわずか7年の間に、同集団の温室効果ガス排出削減量は累計で325.8万トンに達した。この数字は、従来式のガソリン車が183億キロを走行した際の炭素排出量に相当する。また、古本の成約数は2600万冊に上り、樹木約22万本分の森林資源が保護されたことになるとされている。

 以上は、取り組みのほんの一部に過ぎない。中国では国の排出削減目標の達成を後押しするために、実に一般市民の生活から産業の各分野に至るまで、その他にもさまざまな創意工夫や模索が行われている。

 海産物養殖業が盛んな山東省東営市内の利県老十五村には、壮大な太陽光発電所が広がっている。太陽光パネルの下には魚やエビを養殖する池が広がっている。現地のエネルギー会社が養殖業と結び付けて打ち出した800メガワットの太陽光発電プロジェクト「漁光互補池」だ。ここで作られた電力は、7月6日に電力ネットワークに接続された。同プロジェクトは年間11.21億キロワット時のクリーン電力を供給する。そのことで、標準石炭なら37.92万トンの消費、二酸化炭素排出では約90.2万トンが抑えられることになる。クリーン発電だけでなく、エコツーリズムも導入され、地元農家の増収につながっている。

 一方、目を内蒙古のクブチ砂漠を転じれば、黄色の砂を十数キロにわたって覆っている太陽光発電パネルが、まるで「海」のような景観をなしている。この「砂漠の中の海」こそ、企業による「太陽光発電による砂漠化対策」の現場だ。

  クブチ砂漠にある製塩企業を前身に設立された民間企業の「億利資源集団」は2007年11月、中国科学院理論物理所の助けを得て、中国初の砂漠太陽光発電モデルステーションを建設した。工事完了後、億利資源集団はソーラーパネルの下にアカシア、ナツメ、カンゾウ、牧草など砂を固定する効果がある植物を植えつけ、砂漠対策と発電を同時に実現した。クブチ砂漠の太陽光発電による砂漠化対策プロジェクトでは2023年時点で、容量が累計91万キロワットになっている。同プロジェクトによる累積発電量は65億キロワット時に達し、内蒙古地区の住民に10年以上にわたり安定して電力を供給し続ける実績を上げた。2023年1月には、中国国内初の1000万キロワット級の新エネルギー計画「沙戈荒(砂漠ゴビ荒野)」プロジェクトがクブチ砂漠で実施されることが発表された。試算によれば、完成すれば、年間発電量は三峡ダム20基分に達する見込みという。

 以上のように、「ダブルカーボン」は中国が世界に対して行った厳かな約束であり、政府、企業、個人が営む一つ一つの創意工夫と行動でもある。このような行動や実践は、今後ますます増えていくに違いない。(CGTN日本語論説員)

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