放射能汚染水の海洋放出 IAEA報告書は「承認していない」 日本人有識者

2023-08-24 10:33:31  CRI

 日本の岸田文雄首相は、福島第1原子力発電所から出る放射能汚染水の海洋放出を24日午後1時にも開始することを発表したことを受け、元共同通信客員論説委員の岡田充氏は現状を憂慮し、「海洋放出をいったん中止し、代替案を含め再検討すべき」と訴えています。

 日本政府はこれまで、国際原子力機関(IAEA)が7月4日に提出した「国際的な安全基準に合致している」とした調査報告書に依拠するとして、「海洋放出の安全性と正当性が示された」と主張してきました。しかし、岡田氏は23日、中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)のインタビューに対して、「報告書には、海洋放出の方針を『推奨するものでも承認するものでもない』との記載があり、海洋放出の安全性と正当性が示されたわけではない」と注意を喚起しました。さらに、市民団体による指摘を引用して、「タンクに貯蔵されている水の7割近くには、トリチウム以外の放射性核種が排出濃度基準を上回って残存している」、「海洋放出を実施した場合、放出を開始してからも増え続ける汚染水と放射性物質の総量がどこまで膨れ上がるのか、環境への負荷が未知数だ」と問題の深刻さに改めて言及しました。

 元共同通信客員論説委員 岡田充氏

 岡田氏は、「溶け落ちた原発の炉心に直接接触した汚染水を処理した水を、史上初めて海洋に放出する」事実を無視する自民党や政府要人による発言に警戒するよう呼びかけ、「中国政府は処理水問題を利用している」、「処理水問題が科学的議論を離れ、外交カード化している」などといった日本国内の論調は、「実態には合っていない」との見方を示しました。

 岡田氏は、日本政府が地元漁協をはじめ中国や太平洋島しょ国など関係国と民衆の反対を無視して海洋放出を強行するのは「放出が最もコスト・パフォーマンスがいいからだ」と指摘。同時に、海洋放出には100年以上かかるとする専門家の意見を紹介し、「我々は後世にこの問題のツケを押し付けてはならない」と述べています。さらに「海洋は国際公共財であり、汚染水はあくまで日本国内で処理するのが原則」と強調しました。

 一方、今後の対中関係について岡田氏は「日本政府は、台湾問題で中国を軍事抑止する安全保障政策を最優先し、対中関係は悪化の一途をたどってきた。海洋放出は関係悪化を加速する。さらに、日本側は先端半導体の製造装置の対中輸出規制を強化し、軍事抑止とともに経済の安全保障でも中国排除に動いている。日中関係は『負のスパイラル』に陥りつつある」と指摘し、「日中双方に経済関係を強化するモチベーション(意欲)がある今こそ、関係改善に向けた手当てが必要だ」と強調しました。(記事:王小燕、校正:鈴木)

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