北京
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米ハワイのマウイ島で続く山火事が全世界の注目を集めている。最新統計によると、火災により少なくとも114人が死亡し、1300人以上が行方不明になり、2200棟余りの建物が損壊した。この火災は米国の過去100年間において最も多くの死者を出した火災になった。しかし、被災者の心を傷つけたのは火災だけではない。
山火事は大自然の残酷な一面を改めて示した。しかし、米政府の数々の不手際な対応を見れば、今回の山火事は単純な天災ではないことが分かる。
ハワイ州には世界最大とされる総合屋外全災害公共安全警報システムがあり、州内には約400台の警報サイレンが設置されている。うち80台の設置場所はマウイ島だ。しかし火災が発生した際に、これらのサイレンはいずれも「沈黙」した。地元住民のアカナエ・ウォーさんは、「目の前は燃え上がる炎ばかりで、何が起きているのか分からなかった。サイレンはなかった。何もなかった」と話した。住民のベルマ・リードさんは、「私たちがいつ火事に気づいたと思います? 火が家の近くにまで迫ってきた時だったのよ」と語った。米国のネットユーザーは、サイレンは飾り物にすぎず、米国政府と経営者、システム請負業者が共謀して行った手抜き工事だと怒りを示した。マウイ郡の緊急管理部門の責任者はサイレンが鳴らなかった理由について、「サイレンは主に津波用に使われている」と弁明したが、ハワイ州のウェブサイトではサイレンの用途について「火災」も含まれると紹介されている。
マウイ島で火災が急速に拡大した時、現地の供水システムも崩壊に瀕していた。救助に参加した多くの消防士によると、火災発生時には現地の消火栓の水圧が不足していたか、水がまったく出なかったため、消火作業が難航したという。住民のカイル・エリソンさんは、「消防士がやって来たのに水がなかったなんて。私たちは便器から水を汲んだり、冷蔵庫内の冷水を使うしかありませんでした」と話した。英紙ガーディアンは17日に発表した記事の冒頭で、「マウイ島には大きな芝生が広がるゴルフ場がいたるところにあり、高級ホテルにも水でいっぱいのプールが数多く設けられている。企業は水を買いだめして豪華な別荘に売っている。しかし、火災が起きた時になぜ、水道管から水が1滴も出なかったのか」と疑問を示した。
火災発生後の救助の人員の手配の遅さはさらに批判を浴びた。バイデン米大統領は火災発生の翌日、ユタ州ソルトレークシティーで行った政治資金集め活動で「中国脅威論」「中国崩壊論」をあおりたてたが、山火事については一言も触れなかった。バイデン大統領は10日になってようやく、米議会に約400億ドルの追加予算を要請したが、うち災害援助用はわずか120億ドルであるのに対して、ウクライナ支援の資金はその2倍の240億ドルだった。米国のネットユーザーは、「被災者がより多くの支援を受けられるようにするには、ハワイをウクライナに改名するしかないな」と皮肉った。火災現場のすぐ近くには米軍のハワイ基地がり4万人近い軍人が駐屯しているが、火災に直ちに反応することはなかった。地元住民のカイ・ルンニ氏は「私たちはずっと救援を待っていたが、数日間経っても誰も来なかった。本当に驚きました」と話した。ルンニ氏は驚かないでよい。2年前に寒波が米国南部を襲った際に、テキサス州の住民数百万人が停電や断水の被害に直面した時の光景を思い出せばよい。窮境に陥って政府に支援を求める住民に対して、同州コロラドシティーの市長は「あなた方には何の借りもない。政府に救援の責任と義務はない。救援は社会主義政府がやることだ。あなたたちは自分で自分を救うことを習得すべきだ」との冷酷な言葉を言い放ったのだ。
米国映画『プライベート・ライアン』は世界的な名作だ。映画の中では全ての人が全力をあげて1人の普通の兵士を救出する。まさに米国式の夢の物語だ。しかし現実の米国で、そのような光景は全く見られない。数万人のマウイ島住民は、自分の家が燃えていくのをただ見つめるほかなかった。
マウイ島で燃え続けている火はいつか消える。しかし、人々の心の中で燃え上がった「怒りの火」は、いつになったら消せるのだろうか。(CMG日本語部論説員)