【CRI時評】IAEA報告書は日本の汚染水放出計画を「正当化」できない

2023-07-06 10:24:58  CRI

 「不安が払拭できない状況であれば我々としては反対」。国際原子力機関(IAEA)が4日に発表した福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出をめぐる評価報告書について、宮城県漁業協同組合の寺沢春彦組合長は懸念を示した。寺沢氏と同様に、多くの人が同報告書は説得力に欠けるとの見方を示している。

 まず内容面で、同報告書は、評価に関与した専門家全員の意見が十分に反映されておらず、その結論も各専門家の一致した同意を得られていない。性急に公表したもので、限界性と一面性が存在する。

 職能について言えば、IAEAは核技術の安全で信頼できる平和的利用を促進する国際機関であり、放射能汚染水の海洋環境と生物の健康に対する長期的影響を評価するのに適した機関ではない。その上、日本側はIAEAの作業権限を厳しく制限し、海洋放出計画についてのみ評価させ、地下埋設などの他の処理案については評価させず、査察の目標を「人類にとって最善の放射能汚染水処理方法の模索」から「放射能汚染水の海洋放出計画の実行可能性」にすり替え、「放射能汚染水の最も安全な処理方法」や「放射能汚染水の海洋放出による環境への影響」といった重要な問題を評価範囲から除外した。これでは、国際社会の真の懸念に応じることは難しい。

 次に、IAEAが評価のために入手したすべてのサンプルとデータは日本側から一方的に提供されたものだ。当事者である東京電力には放射能汚染水に関するデータを何度も隠ぺい、改ざんした「黒歴史」がある。IAEAは日本側が一方的に提供したデータや情報に基づいて、少数のサンプルの比較分析を行っただけであり、サンプルの独立性や代表性が著しく不十分だ。

 加えて、国際社会における日本の精力的な広報活動も人々に疑念を抱かせている。復興庁の令和3年度予算を例に取ると、福島第一原発事故の風評被害を払拭する費用として、2年度当初から4倍増の20億円を計上した。さらに、「日本政府はIAEAの評価報告書が発表される前に草案を入手して実質的な修正意見を提出していた」「日本政府関係者がIAEA事務局の関係者に100万ユーロ超の政治献金を渡していた」などと韓国メディアが最近報じている。日本政府に後ろめたさがないのであれば、それほど多くの金は必要ないだろう。

 IAEAの報告書も認めているように、日本側が採用している多核種除去設備(ALPS)では「放射能汚染水中のすべての放射性核種を除去することはできない」。これは人々の懸念を裏付けている。福島の放射能汚染水には60種余りの放射性核種が含まれる。日本側が公表したデータによると、ALPS処理水の7割は放出基準の濃度を超え、再処理が必要だという。ALPSの性能の有効性と信頼性は、今後長期的に運用していく中で設備の老朽化に伴い低下していくことになる。同報告書は、海洋放出設備が効果的に運用できるのか、管理措置は適切か、厳格なモニタリング体制が追いつけるのかなどの問題には答えを出していない。

 IAEAの報告書は、日本の汚染水放出計画を「正当化」できない。人類は数世代かけて海洋放出計画による巨大なリスクと災禍を負うことになる。これが国際社会の普遍的懸念だ。(CRI論説員)

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