北京
PM2.577
23/19
夏の到来と共に、日本の放射能汚染水の海洋放出計画の実施も日程が迫ってきている。しかし、最近になって、この計画が日本政府が公に説明するほど安全で無害でもない実態が次々と明るみに出ている。
6月5日、東京電力は福島第1原発の港湾内で5月に捕獲したクロソイから、国の食品衛生法が定める基準値(1キログラム当たり100ベクレル)の180倍となる1万8000ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。6月中旬、宮城県の知事が国に要望書を提出し、海洋放出以外の処分方法を求めたり、海洋放出中止を要請したりしている。そして、19日に発表された、福島民報社と福島テレビによる第41回福島県民世論調査の結果によると、「福島第1原発の『処理水』の放出方法や安全性に関する政府や東電の説明は十分だと思うか」という問いについて、「十分だと思う」と回答した人はわずか15.8%にとどまっている。
地球は人類共通の故郷であり、世界の海はつながっている。放射能汚染水の海洋放出は日本の国内問題の枠を超えた、中国や世界の人々にとって共通の懸念事項でもある。日本が推し進める海洋放出になぜNoと言わなければならないのか、日本側はその理由について知っておく必要がある。
第一に、日本政府が意図的に概念を混同させ、本来果たすべき責任から逃れようとする姿勢への強い不信から来ている。
日本側はこれまで、「放射能汚染水」をどう命名すべきかということに苦心し、放出されるのは「多核種除去設備(ALPS)」で浄化された「処理水」であると主張し続けてきた。しかし、実態として、福島原発事故が原因の放射能汚染水には60種類以上の放射性核種が含まれており、原子力発電所の通常運転で排出される水とは性質が全く異なる。
しかも、東電は原発構内のタンクに保管されている130万トン超の放射能汚染水を、30年程度かけて放出を終える予定を立てている。放射能汚染水対策を検討し始めた当初では、地層注入、水蒸気放出、水素放出、地下埋設など五つの案が提示された。しかし、最終的に海洋放出を決めたのは、「所要時間が最も短く、コストが最もかからない」のが理由だったという。経済的コストとモラルのはざまに置かれて、日本政府は目先の事に着眼しての選択をおこなったと言える。
第二に、東電は放射能汚染水を厳格に処理しているかどうかということへの疑問である。福島第1原発から発生した汚染水には1000種類もの放射性物質が含まれているが、東電はその中のセシウム137やプルトニウムなど30種類の放射性物質のみを検査対象としている。これら30種類の合計値が一定のレベルを下回れば、排出基準を満たすとみなされる。さらに、ALPSの有効性、信ぴょう性、安定性は、第三者機関による検証がおこなわれていない。この点について、日本自身でさえ、ALPSが稼働開始直後から故障が発生し、処理後の放射能汚染水の7割以上において、放出限界値を超えた放射性核種が確認されたことを認めている。
第三に、人類の社会活動と海洋生態環境にもたらす計り知れない脅威への畏怖である。ドイツの海洋科学研究機関によると、福島沿岸には世界で最も強い海流があり、放射性物質は放出から57日以内に太平洋の大部分に広がって、そして3年後に米国やカナダに到達する。海洋そのものには一定の吸収能力があり、生物濃縮・蓄積の影響が現れるまでにも時間がかかる。しかし、人類が一連の被害を示す有効なエビデンスを入手する頃には、汚染の生態環境への影響はもはや食い止めが困難な状況になると言える。
覆水盆に返らず。日本当局に対し、国内外の正当かつ合理的な懸念に目を配り、近隣諸国や関連国際機関を含む利害関係者と十分に協議し、義務を真摯(しんし)に履行し、放射能汚染水が海洋環境と人類の健康を脅かさないよう適切に行動するよう求める。(CMG日本語部論説員)