中国の大学日本語教育に新変化 研究能力の養成へシフト=北京外大シンポ

2023-06-04 16:36:16  CRI

 北京外国語大学で3日、中日韓三国国際シンポジウムが開催されました。会議では、中国の大学における日本語教育が、2020年に教育部が発表した「新文科建設宣言」を背景に、語学スキルの習得から研究能力の育成へとシフトしつつある傾向が指摘されました。

北京外国語大学日本学研究センターの会場

 北京外国語大学日本語学院の院長で、同大学の日本学研究センター主任も務める周異夫教授は基調講演の中で、日本の国際交流基金や中国の日本語学習関連団体による最新の調査結果を引用しながら、中国の日本語学習の現状と課題を分析しました。

 それによりますと、2021年度の時点で中国の日本語学習者は約106万人で、世界全体の日本語学習者が減少する中で、3年前(2018 年度)の調査と比べて5万2000 人余り増加し、増加人数の最も多い国となりました。また、日本語学科がある大学の数は増減がありながらも500校余りの規模が維持されており、英語に次いで外国語学科では2位につけています。

 中国では今春、教育部をはじめとする政府5省庁が、高等教育の中で新技術、新産業、新業態、新モデルに適応する学科を新設すると同時に、経済・社会の発展に適応できなくなる学科の淘汰を視野に入れた「専攻設置調整最適化改革案」を公布しました。時代の移り変わりを背景に、近ごろ実施された全国の大学日本語教師を対象とするアンケートでは、「日本語専攻の将来」について「非常に楽観」と「比較的楽観」が合計33%に止まっており、危機感のにじみ出る結果となっています。

 一方で2012年以降は高等教育や学校教育以外の場での日本語学習者が減少傾向にありますが、中等教育での日本語学習者の増加が顕著であり、学習者総数の増加を押し上げています。

 周教授はこうした動きに対し、今後は中等教育と高等教育のつながりや、大学の日本語教育や日本語専攻の新しい目標と結び付けて分析する必要性を指摘しました。さらに、2020年に教育部による「新文科建設宣言」が行われ、「地域・国別研究」が一級学科と位置付けられている背景の下で、「日本語を使って、知識の学習、能力の養成、資質の養成、とりわけ研究する能力の養成が求められている」と指摘しました。特に、「地域の中の日本、世界の中の日本、あるいは世界が日本をどう研究しているのか」に目をつけている大学が増えているということです。

オフラインで参加した学者たちの記念撮影

 中日韓三国国際学術シンポジウムは2013年に日本の文教大学の呼びかけで発足し、韓国日本言語文化学会と北京外国語大学の主催により3カ国が輪番で開催してきました。今年はオンラインも併用する形で9回目の開催となり、日本文学、東アジアの文化交流、言語、日本語教育などにフォーカスして、基調講演と4つの分科会に50名余りの学者が参加しました。(取材:王小燕、校正:梅田謙)

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