【CRI時評】米国の「チキンゲーム一時停戦」で、市場の「本当の心配」が始まった

2023-06-02 13:01:25  CRI

 「一時停戦はしたが、終わりには程遠い」――。国際世論は1日、米議会下院が債務上限法案を可決したことを受けて、このような評価を下した。同法案は2025年初まで債務上限を停止する一方で、2024年度と2025年度の政府支出を制限するものだ。一安心した人も多いようだ。しかし、法案が続けて上院で可決され、大統領が署名して発効したとしても、問題は本当に解決したのだろうか。米国と世界は本当に平穏になるのだろうか。

 現状では米国債が世界の債券市場をけん引している。米国債が債務不履行の状態になれば、米国にも世界にも破滅的な影響が及ぶ。米国が今のところ示している解決策は、まずは債務上限の2年間停止を決めてから、「改めて議論」というものだ。つまり、米政府は当面、上限に縛られずに2025年初まで起債を続けることができる。米国が債務上限の「タガ」をいったん外して債務不履行という「爆弾」の一時停止ボタンを押した格好だ。

 しかし、このような解決策は問題を後回ししたにすぎない。根本的な解決にはつながらず、むしろ米国の借金の積み増しを促すものだ。米国債の規模は2025年初には史上空前の水準に達するとの見方もあり、その時になって米国経済に構造的な問題が発生する可能性がより高まったと指摘されている。そのために、債務上限法案が可決されたことによって市場の「本当の心配」が始まったと言われている。

 米ドルは世界一の準備通貨であり決済通貨だ。米ドルが国際社会おける準備高に占める割合が約6割で、国際決済に占める割合は約4割だ。しかしこのスーパー特権は、米国が自らの利益を守るための道具に変えられている。

 「ドルは我々の通貨だが、それ(為替変動など)はあなたたちの問題だ」――。米国のコネリー米財務長官(当時)は、こう豪語した。歴史を振り返っても、米国が金利差を操作する金融政策を発動して世界の富を収奪した例は枚挙にいとまがない。フランスのドゴール大統領(当時)は「ドルは何の価値もない紙くずでありながら、他民族の資源や工場を略奪している」と嘆いた。また、米国は金融分野での発言権を利用して国際決済システムのSWIFTから他国を追放するなど、「言うことを聞かない国」に「懲罰」を科している。本来なら世界金融の「安定装置」として機能するべきドルが、他国の悪夢になっている。国際格付け会社のムーディーズはこのほど、米国の債務危機と制裁乱用がドルの地位を脅かし、世界の通貨システムは今後数十年でより多様化すると表明する報告書を発表した。

 世界一の経済国である米国では現在、重要な経済指標が下落しつづけている。景気後退のリスクが高まり金融業界が不安定になるなどで、世界にさまざまな不確実性をもたらしている。数カ月間にもわたり紛糾した米国の債務危機は、市場の深刻な動揺を改めて引き起こした。繰り返される終わりの見えない「チキンゲーム」をによって人々は、世界経済の安全保障にとっての重大なリスクをもたらしているのは誰なのかを、ずいぶん前から感じ取っている。(CRI論説員)

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