北京
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岸田文雄政権が率いる日本政府が昨年末、安保3文書で軍事力増強による抑止力の強化を求めたのに対し、沖縄県議会は今年3月30日に、日本政府に対話と外交による平和構築の取り組みを求める「意見書」を可決して、関連省庁に手渡しました。
この意見書に先立って、沖縄県では複数の団体や個人から同様の趣旨の請願・陳情が相次いで県議会に提出されていましたが、全会一致が原則のためにいずれも採択には至りませんでした。こうした状況を踏まえて、今回の意見書は「議員提出議案」の形で提出され、多数決で可決されました。
この一連の流れの発端となったのは、沖縄大学地域研究所の泉川友樹特別研究員が個人の立場で作成した請願第1号です。この請願第1号の紹介議員になり、この動きに積極的にかかわってきた、沖縄県議会議員の喜友名智子氏(きゆな ともこ/立憲民主党)が20日、中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)のインタビューに答えました。
沖縄県議会・喜友名智子(きゆな ともこ)議員(提供写真)
喜友名氏はCMGに対し、今回の意見書が日中平和友好条約締結45周年など東アジア政治の歩みにおいて一連の節目となる年に議論、可決されたことに大きな意味があるとし、「沖縄は平和の中で生きる道をつくるべきだ」と強調しました。
昨年2月、ウクライナ情勢の悪化を受け、「日本国内で『ウクライナの次は台湾だ』と、台湾有事論だけが一人歩きする空気感に懸念を覚えた」という喜友名氏は、同じ考えを持つ泉川氏から「日中外交の歴史と、先達の想いを理解することが必要だとの請願を出したい」と相談を受け、「至極まっとうな考えだ」という思いから、請願第1号の紹介議員を引き受けたと振り返りました。
喜友名氏は「日本国内での対中国感情が最悪と言われる今、『中国と外交努力せよ』と発言するのは勇気のいることだ」と、泉川氏の請願とその後の一連の言論活動をたたえました。また、この意見書が可決された背景について、「多くの県民は、(政府が外交努力をすることなく)対抗意識だけを前面に出し、沖縄がその最前線に置かれるのはおかしいと感じていた。その中で個人から出された請願が、『人前では言いにくいけど、本当は自分もそう思っている』という見えない声の求心力になった」と分析した上で、県議会内でも、党派や所属を超えて議論をリードしてきた有志議員たちの結束があったと語りました。また、喜友名氏自身は、「政治的緊張が高まり、沖縄での軍備強化が進む現状に、県議会が何の意思も示さないのは現状追認にしかならない」と危機感を感じたことが、活動のきっかけだったと示しました。
沖縄県議会の意見書が4月末に日本政府の関連省庁に手渡されると、日本の報道は関係筋が口をそろえて言う「防衛力は外交の裏付け」との発言を取り上げました。
喜友名議員はこれについて、「国の外交力の低下」と危惧を隠しません。その上で、4月に沖縄県が「地域外交室」を設置した動きを取り上げ、「日本政府の唱える『防衛力による裏付けのある外交』に対し、沖縄県は『丸腰の地域外交』を行う」「沖縄は武力を持つ主体にはなりえない。県民の多くは、沖縄の島々が武力行使の手段に使われることも、そのために攻撃の目標地点になることも望まない」と、あくまでも平和を擁護する姿勢を表明しました。
今後については、「請願第1号で始まった議論は、『外交文書』による国同士の約束の大事さを考えさせられた。東アジアの信頼醸成への取り組みの議論はまだまだ続く。沖縄だけでなく、日中友好、東アジアの平和構築を目指す動きが広がっていくよう期待するばかりだ」と胸中を明かしました。(取材:王小燕、校正:梅田謙)