火星北部に海が存在していたことを中国人科学者が証明

2023-05-19 14:00:58  CRI

 中国地質大学(武漢)地球科学学院の肖龍教授が率いる国際研究チームはこのほど、中国初の火星探査ローバー(無人探査車)の「祝融号」に搭載されたマルチスペクトルカメラ(MSCam)が取得したデータを総合的に分析することで、火星表面で海洋の堆積岩の岩石学的証拠を発見し、火星北部にかつて海洋が存在していたことを初めて証明しました。関連する研究成果は「ユートピア平原の海洋の堆積岩の証拠:火星ローバー『祝融号』の観測」と題し、中国の英字科学誌「国家科学評論」に掲載されました。

 現在の火星は寒冷で乾燥しており、流水や生命の痕跡に乏しいのですが、数十億年前の火星の環境は大きく異なっていたとされます。これまでの研究により、初期の火星には液体の水が大量に存在したという、地形分析と数値シミュレーションを通じての古海洋仮説を提出されています。火星北部の古海洋区域で特殊な海洋堆積地質が形成された場所はボレアリス荒野と呼ばれていますが、現地探査データが不足していました。そのため、火星北部の平原に海が存在したかどうかが議論の的になっていました。

 中国の火星探査機「天問1号」に搭載されたローバー「祝融号」は、2021年に火星北部平原東部のユートピア平原南部の縁に着陸しました。この場所は、それまでに提唱されていた古代海岸線付近のボレアリス荒野に属します。このことで、古代海洋堆積物の存在を検証するチャンスが生まれました。

 「祝融号」は着陸後、古い時期に海岸線だった可能性がある領域に向かって南に向かいながら、露出したボレアリス荒野の地層を観測してきました。すでに約1921メートルを走行し、複数の画像生成と分析システムを使用して露頭と地表の岩石の詳細な現地観測を行ってきました。うちナビゲーションと地形カメラはすでに106組のパノラマ画像を取得し、走行ルート付近の多くの岩石の表面形態と構造の特徴を詳細に記録しました。

「祝融号」の走行路線図と巡視エリアの地形

 肖教授は現状について、「ローバーの車載カメラから送られてきた写真を調べたところ、これらの露出した岩石の層理構造は、火星表面によく見られる火山岩や、風砂の堆積によって形成された層理構造とは著しく異なることが分かった。これらの層理関連知識が示す双方向の水流の特徴は、地球の浅海環境における低エネルギー潮流によるものと一致する」と説明しました。(非、鈴木)

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