【観察眼】「真の軍事大国となる」ことは本当に正しい選択なのか?

2023-05-12 14:30:38  CRI

 日本の岸田文雄首相が米誌タイムの表紙を飾ることになった。写真の公開と共に、米国の駐日大使が自身のツイッターに「表紙を飾り、おめでとうございます!」と投稿して祝意を示した。一方、表紙では、「日本の選択」と題し、「岸田首相は数十年にわたる平和主義を捨て去り、真の軍事大国となることを望んでいる」と指摘している。同誌は、4月28日に岸田首相に独占インタビューしたが、記事では「世界3位の経済国を軍事力で大国に戻そうとしている」という説明もある。なお、岸田氏は4月には同誌の「世界で最も影響力がある100人」の1人にも選ばれた。

 しかし、日本の隣国に住むわれわれ中国人は、この記事をみて驚きを禁じ得ない。日本を「真の軍事大国」へと導こうとすることが理由で、表紙を飾ったとなれば、どうして表紙掲載が祝賀に値するのか、これも理解に苦しむ。

 偶然の重なりだったのか。

 岸田首相がタイム誌のインタビューを受けた同日、中国の呉江浩駐日大使は東京で着任後初の記者会見を行った。講演の部で、呉大使は中国の核心的利益である台湾問題について、次のように言及した。

 「『台湾の有事は日本の有事だ』と騒ぎ立てるのは荒唐無稽で危険である。中国の内政にほかならない問題を日本の安全保障と結び付けることは、論理が通じず、極めて有害だ。もし日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」

 日本メディアは10日、林正芳外相が衆院外務委員会で呉江浩大使の発言を「極めて不適切だ」と批判し、外交ルートを通じて抗議したことを明らかにした。

 ただし、中国人目線からみれば、どうもしっくりいかない点がある。それは、ほとんどの日本メディアが、呉大使の発言を引用しながら報道するものの、「もし日本が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば」という前提となるフレーズだけが見当たらないことだ。そして、この文が省かれた日本メディアの記事を読んで受けた印象を端的にまとめれば、「もし日本人が『台湾の有事は日本の有事だ』と口にでもすれば、戦火が日本にも降りかかってくるから気をつけろ」というような、脅かしのイメージが強烈である。

 日本メディアの台湾問題報道におけるこうした「小細工」は、実は半年ほど前にも起きたばかりだ。習近平主席が台湾問題について、「武力行使の放弃は約束しない」と発言した文言が日本メディアの見出しになった。ただし、各社の翻訳と加工により、その内容は「中国は台湾統一のため 武力行使も辞さない」となっており、もともとのニュアンスとはまるで異なるのである。

 半年もしないうちに同じ手口が繰り返された。その理由は、はたして、日本のメディアや外交当局関係者の中国語力の問題なのだろうか。もしそれが理由でなければ、呉大使の台湾関連発言の報道からは、メディアと当局が結託して共犯者となり、平和を犠牲にしてでも、日本を危険な方向へと推し進めていくというメッセージが読み取れる。

 もう一つの動きもあたかも偶然のように見える。

 日本メディアによると、北大西洋条約機構(NATO)は1年以内に日本で事務所を設立する計画だ。ブリュッセルのNATO本部には以前から「日本政府代表部」が設置されている。北大西洋や欧州地域の安全保障枠組みであるNATOにとって、東京での事務所設置は必要不可欠ではない。このことは誰もが知っている。アナリストたちは、東京事務所の設立は機能的に必要というよりも、一種の姿勢の表明の意義が大きいとみている。また、中露などアジア太平洋・極東地域の関係国の安全保障に心理的なプレッシャーを与えるのが目的で、新たな軍備競争を引き起こしかねないとも見ている。日本はそうした連鎖反応を見越したうえで、一歩踏み込もうとしている。果たして真の意図は何だったのか、周辺諸国の懸念を招いても仕方がない動きである。

 アジア地域には代理人戦争はいらない。日本を「真の軍事大国」にしようとする岸田首相の選択は、本当に日本の国益にかなう選択なのか。一人ひとりの日本の国民にぜひよく吟味していただきたい。(CMG日本語部論説員)

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