北京
PM2.577
23/19
日本最大のポータルサイト・ヤフージャパンに最近、「米国債、2月は多くの国が売り越し」という記事が掲載された。すると、「ドルはすでに瓦解し始めている」「同盟国からも売られるアメリカ国債でどうよ(笑) 完全に信用性無くしてる」「バイデン政権はただ3年で7兆増やして、アメリカの国債は31兆ドル。銀行も潰れるレベル、こんな国債売らなかったら手の中で腐るぞ」といったコメントが寄せられた。日本と米国は政治的にも経済的にも密接な関係にある。一般的な日本のネットユーザーのこうしたコメントは、人々がこのような認識をもつに足る情報がすでに数多くあることを示している。これらの短いコメントには、深い意味があるのだ。
米ドルの世界の準備通貨としての地位が崩れ始めている。1年前には想像もできなかった話だ。この1年に、いったい何があったのだろうか。データによると、2022年、世界の準備通貨としてのドル比率は急激に低下し、世界の総準備通貨の47%にまで低下した。1年で8%という異常な落ち込みは、ここ数年におけるドル比率の年平均減少率の10倍に相当するものだ。
この変化は、米国主導のロシアへの金融制裁から始まったとの見方がある。ロシアとウクライナとの紛争勃発後、米国は西側主導のSWIFT決済システムからロシアを追放し、ロシアの3000億ドル以上の外貨準備を凍結または没収した。この動きは、世界各国にシステム的なリスクを意識させた。1971年、米ドルと金の交換が停止されると、米ドルは国家の信用を担保とするようになった。しかし、ドルによる外貨準備が、米国が他国を圧迫する政治的ツールになれば、国家の信用は雲散霧消するだろう!各国のドル準備が米国の手に握られているということに、どの国も注意しなければならない。ドル準備が多ければ多いほど、コントロールされるようになる。お金を払って不自由を買うなんて、そんな愚かなことをするものはいないだろう。
一方、「反グローバリズム」の波の中で、国際決済通貨としてのドルの必要性は、徐々に失われつつある。ロシアとウクライナの衝突が勃発した後、各国は立場を異にし、世界は分断に直面し、グローバル化のプロセスは挫折し、「反グローバリズム」はますます顕著になっていった。各経済体は二国間やEU、ASEAN、BRICS諸国など小グループなど、限られた範囲での団結と利益を求めている。イラク中央銀行は2023年2月、人民元による対中貿易の直接決済を許可すると発表した。3月29日、ブラジル政府は中国との貿易において、ドルを中間通貨として使わず、自国通貨で決済することを検討していることが報じられた。BRICS諸国は3月末、「新通貨」の開発を検討し、ブラジルのルーラ大統領は、BRICS諸国に自国通貨での決済を呼びかけた。各国はそれぞれの方法を検討し、自国通貨による貿易決済に舵を切っている。
トランプ米前大統領は4月14日の演説で、「我々の通貨は崩壊しつつあり、まもなく世界標準ではなくなるだろう。これは200年で最大の失敗になるだろう」と述べた。米国の政治家は、ドル覇権が米国にもたらす実際の価値をよく知っている。強大なドル覇権は、間違いなく米国の利益となるが、それは世界各国の利益にもなるのだろうか。ブラジルのルーラ大統領はこのほど、「なぜすべての国がドルで決済しなければならないのか。なぜ(BRICS諸国は)自分の通貨で決済できないのか」と問いただした。ドルが現在のような機能を持つようになった背景には、歴史的な理由がある。しかし、歴史はすでに新たなものとなった。はたして、ドルはこれまでの機能を維持することができるのだろうか。
ドルの地位は失われつつある。米国政府がドル覇権を乱用し、ドルの信用に深刻な影響を与えたこと、そして、世界情勢の変化がその原因だ。短期的には、ドルに代わる他の通貨はないかもしれない。しかし、放たれた矢が戻ることはない。これからの展開に注目していよう。(CMG日本語部論説員)