北京
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3月28日、アニメの海賊版サイト「B9GOOD」が刑事摘発されたニュースが注目を浴びた。同サイトのサーバーは中国に置かれ、アクセスの95%は日本からだった。
摘発の経緯は、日本の一般財団法人「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」の刑事告発を受けて、中国・江蘇省の公安局が動いたというもの。当該サイトは閉鎖され、運営や配信を行った4人が身柄を拘束され、取り調べを受けた。今回の取り締まりについて、CODAの後藤健郎代表理事は「国際協力の画期的な成果」と評価している。
中国も日本も、国際著作権保護条約「ベルヌ条約」の加盟国だ。外国の著作物であっても、共通する国際条約(または国同士が結んだ協定)によってカバーされるものであれば、中国の法律によって守られる。中日が協力して、国を超えて海賊版サイトを取り締まった今回の行動からは、知的財産権を尊重し、それを保護しようという中国の姿勢が見て取れる。
中国政府の知的財産権保護の取り組みに関する最近の動向として、次の3点を挙げたい。
一つ目は、政府当局が著作権保護を極めて重視している点である。国家版権局等の4つの中央省庁は、権利侵害・海賊版取り締まりのキャンペーン「剣網特別行動」を、2005年から19年連続で展開してきた。オンライン配信される映画・テレビ作品の保護を重点とし、権利侵害・海賊版に関する重大事件を取り締まってきたことは、国内外の権利者からも評価されている。
二つ目は、5G通信やクラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどの新技術によりデジタル著作権保護の水準を引き上げている点である。その一例として、中国著作権保護センターと民間のブロックチェーン開発を手掛けるIT企業が、2022年8月に提携協定に調印したことが挙げられる。両者は、デジタル著作権チェーン(DCI体系3.0)の共同構築を足がかりに、インターネット著作権サービスの革新メカニズムと産業の新しいエコシステムの構築を模索している。
三つ目は、外資系企業の知的財産権の保護を重視している点である。中国は今、トップダウンデザインの視点からビジネス環境の改善に乗り出している。21年に「知的財産強国建設綱要(2021-2035年)」と「第14次五カ年計画国家知的財産権保護及び運用計画」を公布しており、外商投資企業の知的財産権保護業務の推進について計画を立てている最中である。
これらの取り組みの成果は、いくつかのデータから読み取れる。
まず、中国の有料動画配信サービスのユーザー数と市場規模に大幅な伸びが見られている。そこには、デジタル経済の急成長や、人々の暮らしが豊かになっていることに加えて、著作権保護意識の向上というバックグラウンドがあり、正規のルートでコンテンツを楽しむ人が増えていると言えるだろう。中国のデータ分析企業「艾媒諮詢(iiMedia Research)」が発表した最新の報告書によると、22年の中国の動画を含むナレッジコンテンツサービスの市場規模は15年の約70倍に増え、1126.5億元に達している。こうした拡大傾向は今後も続き、25年の市場規模は2808.8億元に達する見通しだ。利用者数も増え続けており、23年は5.7億人を突破することが見込まれている。
次に、中国はデジタル著作権管理(DRM)ソリューションの最も大きな市場の一つに急成長している。21~28年に中国のDRM市場は年率15.9%の伸びで成長し、20年の5.85億ドルから28年には17.7億ドルに達するだろうと予測されている。
ビジネス環境の改善は、中国国内における外国の権利者の知的財産権保護の促進にもつながっている。報道によると、21年に外国の出願人が中国で取得した発明特許の権利付与は11万件であり、前年同期比で23%増加した。商標登録は19.4万件で、前年同期比5.2%増加した。
一方で、通信技術の発展と作品の使用形態の多様化は、世界的な知的財産権保護の難しさを増大させている。特に、映画・テレビ作品の著作権をいかに保護するかは、各国の権利者を悩ませる共通の難題であり、そこでは国際協力の強化が必要である。その中での、今回の日本語アニメ海賊版サイトの取り締まりは、中国が知的財産権に関する国際条約に定められた義務を積極的に履行していることの表れであり、知的財産権を重視・愛護する法治国家としての地道な行動でもあるといえる。
3月末、日本のアニメ監督・新海誠の最新作『すずめの戸締まり』が、中国で公開からわずか3日で1000万人以上の観客を動員し、3.4億元(約65億円)の興行収入を上げた。改善が進む中国のビジネス環境で、このように大きな見返りを得る海外の権利者は増えている。
中国は今後も、知的財産権保護のための積極的な取り組みを続けていく。(CMG日本語論説員)