北京
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中国北京で閉幕したばかりの第14期全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)第1回会議は、一連の人事、機構改革、法改正を通じて、中国に多くの変化をもたらしている。日本メディアからは今回の国務院(中央政府)機構改革について、「中国が米国からの圧迫によりうまく対応するため」とする報道も出ているが、果たしてそうなのだろうか。
今回の中国国務院機構改革の重点は科学技術、金融監督管理、データ管理、農村振興、知的財産権保護、高齢者対策などを担当する機関の職責の最適化と調整の強化にある。これらの分野からもわかるように、今回の改革は国の経済と社会発展の必要に合わせて行われたもので、「問題指向」「人民中心」「勇気ある自己革新」という指導思想を表している。
問題指向とは、問題解決に向けて、速やかに問題を発見し、速やかに解決することだ。中国では、金融が経済の高度成長を継続して後押ししてきた一方で、複数の部門から指示が出され、責任の所在が不明確であるといった問題が徐々に顕在化してきた。また、一部の金融商品や金融活動に対する監督管理が適切なタイミングで行われず、金融システムの健全な運営に影響を及ぼしている。これらの問題に対応するため、今回の改革では国家金融監督管理総局の創設などを通じ、各種の金融商品・金融活動に対して法に基づいた監督管理の実施を確保し、責任の境界の不明確さに起因する監督管理の空白や監督管理基準の不一致、監督管理の重複などを解決し、金融の安定を確保する。
国家データ局の創設も同様だ。中国ではデジタル化が急速に発展する中で、各種のアプリケーションが一般市民の生活に大きな利便性をもたらしている一方、さまざまなソフトウエアのバックエンドにはユーザー、さらには国に関する多くの情報が握られている。2021年7月に中国の配車サービス大手が不法に個人情報を収集・使用した問題を指摘され、政府から削除と是正を求められた事件は、政府と一般大衆の双方に警鐘を鳴らすものだった。政府は今回、国家データ局を新設することで、データを国家レベルで一括管理し、データの安全性を確保すると同時に、「デジタル中国」の建設を総括的に推進することになる。
高齢化は中国が直面するもう一つの切迫した課題だ。これまで、中国の高齢者事業は民政部、国家衛生健康委員会など複数の政府機関が担っており、それぞれ基準とシステムが異なり、提供するサービスにも重複するものがあった。今回の改革では、これまで衛生健康委員会などが中心となって担当していた複数の高齢者関連事業を民政部に移管し、多重管理を解決し、仕組みを整理した。
また、末端の国民の声によりよく耳を傾けるため、今回の改革では国家信訪局(陳情受付・処理機関)を国務院直属の機関に格上げして、苦情解決に関する取り組みを正式に国家レベルに引き上げ、国務院の日常業務として位置づけた。これにより、国民の苦情がより重視され、苦情の受付と処理に対する監督も強化され、国民の利益がよりよく保障されていくものとみられる。
中央国家機関の人員枠の削減も今回の改革の一環だ。中央国家機関各部署の人員枠は一律に5%削減され、削減によって浮いた枠は主に重点分野と重要業務を強化するための業務に回されるという。再編は人だけでなく、付随する給与や福利厚生などの待遇面にも及ぶ。そのため、この改革は直接、一部の人の利益や「お役所仕事」の弊害を打破するものと見なされており、それによって財政負担を軽減し、政府の運営効率を高め、貴重な人員枠をより科学的かつ効果的に利用するという考え方だ。
一連の改革措置は、中国の経済や社会発展に対する最高指導層の戦略的思考を反映し、中国政府がより科学的、効率的で、より健全な方向に向かって自己革新を続けるという決意も示している。今回の改革を「米国による対中圧迫に対応するためだ」とする説は、物事を捉える器がいささか小さいのではないだろうか。(CMG日本語部論説員)