北京
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2月27日に開催された世界貿易機関(WTO)紛争解決機関会合で、米国は再び拒否権を乱用し、上級委員会の新たな委員の選任プロセスの立ち上げに関する提案を拒否した。同案はWTOの127のメンバーが共同で提出したものだが、阻止されたのは今回で63回目だ。
紛争解決制度はWTOの重要な柱の一つだ。紛争解決手続の第一段階は当事国による協議で、協議によって紛争が解決できなかった場合には、パネル(小委員会)に紛争を付託することができ、パネルの判断にも不満がある場合には、さらに上級委員会に申し立てをすることができる。そのため、上級委員会は世界貿易の「最高裁」とも呼ばれ、その報告書は「終審裁定」として拘束力を有する。上級委員会は7人の委員により構成され、審理を行うための定足数は3人であることから、正常な運営を維持するには少なくとも3人の委員が在任していなければならない。米国政府が近年一貫して新たな委員の選任を阻止しているため、2019年12月に委員が1人だけとなり「機能停止」に追い込まれ、WTOは設立以来最大の危機に陥った。20年11月30日には残る1人の任期も満了となった。
米国は近年、保護主義政策を公然と実行し、中国や欧州連合(EU)などに対して貿易戦争を仕掛けてきた。米国の立場からすると、WTOを自身のために使えるように変えられないのなら、紛争解決制度をまひさせておけば、少なくとも自身に不利な裁定を回避することができる。
米国が単独でWTO存続の危機を引き起こし、それに「便乗」してきたことが分かる。米国が18年に発動した鉄鋼・アルミ製品輸入に対する追加関税をWTO協定違反とした紛争解決パネルの裁定に対し、米国は22年12月、それを拒絶したばかりか、仲裁機関の「機能停止」を利用して上訴し、裁定の執行を無期限に放置させようと試み、多くの国の不満を招いた。
ワシントンの政治家は「ルールを尊重せよ」とよく口にするが、実際にはルールに対して「合えば用い、合わなければ捨てる」で、新たな火種を作ろうとさえしている。バイデン政権発足後、「大国間競争」の旗を掲げ、「国家安全保障」の概念を一般化し、新バージョンの「アメリカ・ファースト」を推し進め、国際貿易ルールを破壊している。
他国の企業を「エンティティーリスト」に追加し、ロング・アーム管轄と貿易制裁を行い、「CHIPS法」「インフレ抑制法」を実施するなど、米国の一連の手法は、グローバルな産業チェーンとサプライチェーンを著しく妨害・破壊し、自由貿易の原則とWTOのルールに違反するものだ。
国際ルールは米国の「家庭内ルール」ではなく、米国のためだけに奉仕するものであってはならない。貿易紛争を力によって解決し他国に譲歩を迫る米国の一部の人たちの試みは、自由貿易のルールを踏みにじるばかりか、多国間主義に基づくガバナンスルールをも破壊するものだ。グローバル化・多極化する世界で、米国がやりたい放題で、「アメリカ・ファースト」の尻拭いを全世界にさせることは不可能だ。米国がWTOという場所を荒らし、足をからめてWTOを倒そうとしても、荒らされるのは自分自身で、足をからめて倒されるのも自分自身だと気づくことになるだろう。(CRI論説員)