【CRI時評】米国の警察官による黒人男性暴行死はどこまで続くか

2023-01-30 10:45:31  CRI

 今から55年前、米国のアフリカ系人権活動家のマーティン・ルーサー・キング牧師がテネシー州メンフィスで暗殺され、世界に衝撃を与えた。

 それから55年後、同じ都市で29歳のアフリカ系男性タイリー・ニコルズさんが警察官5人から暴行を受けて死亡し、全米の怒りを招いた。

 米国の数十都市で27日夜から28日にかけて抗議デモが行われ、2020年の「ジョージ・フロイドの死」が引き起こした全国規模の騒乱が再発するのではないかと懸念するメディアもあった。

 米国の警察官によるアフリカ系米国人への度重なる「特別扱い」は根本的に、米国式民主主義の下で深く根付いた人種主義に由来する。米国の「マッピング・ポリス・バイオレンス」によると、22年に米国の警察官によって殺害されたのは1186人で、その26%がアフリカ系だった。だが人口全体に占めるアフリカ系の割合はわずか13%にすぎない。13年から22年までのデータによると、アフリカ系が警察官の暴力的な公務執行を受ける可能性は白人の2.9倍だ。

 同時に、米国の党派対立による分極化が警察改革をさらに難しくしている。21年3月に米下院が「ジョージ・フロイド警察活動の正義法案」を可決し、フロイドさん暴行死から1年がたった同年5月にはバイデン大統領が議会による法案可決を保証すると声高に表明したものの、超党派による協議は決裂した。バイデン政権は22年5月、一歩譲って次善の策として、警察官による公務執行を是正する大統領令に署名したが、力加減は大きく割り引かれ、何の役割も果たしていない。

 また、米国の銃文化と警察の暴力的な公務執行も一定の悪循環を生んでいる。スイスに本部を置く「スモール・アームズ・サーベイ」によると、米国の民間人が所有する銃の数は推定3億9300万丁に上る。「銃の数が人の数よりも多い」という現実は客観的に、米国の警察官による公務執行の危険性と暴力的な公務執行の傾向性を高めている。この悪循環が「米国病」を悪化させている。

 バイデン大統領は先日の演説で、キング牧師が夢見た平等と正義はまだ実現されていないと認めた上で、米国の「魂」のために戦うよう改めて呼びかけた。しかし米国の「魂」とはどこにあるのか。ニコルズさんの苦痛の叫び声の中にあるとでも言うのだろうか。(CRI論説員)

 

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