【観察眼】防疫政策調整を支える、中国の医療保障体制の強化

2023-01-05 18:50:10  CRI

 12月26日夜、中国国家衛生健康委員会は新型コロナウイルス感染に対する「乙類乙管」政策を2023年1月8日から実施すると発表した。これに伴い、新型コロナウイルス感染者に対する隔離措置が実施されなくなり、濃厚接触者の判定も、入国者に対する管理措置も取られないことになった。2020年1月から実施されてきた「乙類甲管」政策が、この「乙類乙管」に切り替わることで、中国の防疫措置は新たな時期に入る。この調整の実態は「防疫作業の緩和」ではなく、「医療サービスと保障のさらなる強化」である。

 政策の調整に伴い、中国各地の防疫措置が変わり始めている。12月下旬、SNSでは蘇州市に関するショートムービーが話題になった。同市姑蘇区のPCR検査所が「発熱外来」に変身したという内容だ。診察と調剤が可能で、もちろん医療保険を利用した支払いにも対応している。品薄で手に入りにくくなっていた解熱剤も、この発熱外来では手に入れることが可能だ。蘇州市では1000カ所以上のPCR検査所が発熱外来に姿を変えた。これにより、市内のすべてのコミュニティがカバーされたことになる。市民にとってはより便利になり、既存の病院の負担も軽減された。

 こうした動きは蘇州市に限ったものではない。統計によると、2022年12月25日現在、中国の2級以上の病院(通常、県・区・市クラスの病院が当てはまる)の発熱外来は1万6000カ所を超え、末端医療衛生機関が開設した発熱外来と発熱診察室は4万1000カ所を超えている。その背景には、患者の増加に対応するための中国衛生健康委員会の指示があった。「しかるべき医療機関はすべて発熱外来を設置する」ことを原則としたうえで、発熱外来の診察プロセスの簡略化、医薬品の増加、サービスの効率化が進められた。

 北京では、すべての発熱外来と発熱診察室が開放されると同時に、体育館や仮設病院にも臨時の発熱診療所が開設された。病状が軽い患者なら、ここで診察を受けて薬を受け取るまでのプロセスが最短10分ほどで完結する。北京のある区では、臨時発熱診療所の診察患者の数が同区内のすべての3級病院(比較的に規模の大きい病院)の発熱外来の患者数を上回ったという統計も話題になった。病院にかかる負担を効果的に緩和させた実例だ。

 感染拡大が進むと、負担やプレッシャーのかかる先は重症医学科や救急科に集中する。重症患者の治療について、中国国家衛生健康委員会は2022年12月初めに関連方案を配布し、各地の医療機関に施設の拡張を求めていた。例えば、新型コロナの重症患者を診療可能な総合ICUがある病院の病床数を増やすとともに、ICUに転換可能な設備を一定の割合で準備することを求めた。その条件は、「必要に応じて24時間以内に総合ICUに転換できる」ようにするというものだ。

 北京の3級甲等総合病院(中国の病院分類の最高位)である朝陽病院を例にする。同院には呼吸器科、救急科、重症医学科、心血管科などの専門性があり、計15の総合救急治療区とベッド538床を備えている。そのうちICUの病床は69床あり、そのすべてで新型コロナウイルス患者を治療できる。

 中国各地の病院は、すべての病床や医療資源を統括し、新型コロナ患者の治療に力を尽くしている。同時に、医療従事者の配置についても、病院全体での統一的な計画を実行している。適切な人員と医療資源を、最も必要な場所に集中させることで、医療の提供を保障し、死亡率の低下に貢献している。

 春節(中国の旧正月、今年は1月22日)が近づいている。今回の防疫政策の変化によって、今年の春節には大勢の人々が帰省することが予想される。しかし、人の流れが大きくなればなるほど、各地での感染拡大のリスクは高まる。これに対して、農村部はすでに対策に乗り出している。医薬品の十分な供給を確保し、重症患者をよりハイレベルな医療機関へと運べるよう備えている。そのための車両の用意のほか、都市部と農村部の病院間の連携を構築することで、都市部の医療資源の利用や、リモートでの医療指導、医療関係者の派遣なども準備されている。

 「乙類乙管」政策の導入に伴う感染者の増加リスクに対応するため、中国は政府から各級医療機関までが一丸となって、医療保障とサービスの提供に全力をあげている。この元日の連休には、北京の三里屯、上海の外灘、重慶市の解放碑など、全国各地の繁華街が久しぶりのにぎわいを見せた。政策の転換に伴う医療体制の転換に支えられて、春節にはさらなる活気が戻ることだろう。(CMG日本語部論説員)

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