魯迅『藤野先生』めぐるシンポジウム開催=福井県あわら市

2022-12-28 16:38:20  CRI

 中国の文豪・魯迅の代表作である『藤野先生』をめぐる共同シンポジウムが26日、ゆかりの地である福井県あわら市で開かれました。『藤野先生』は、魯迅が仙台医学専門学校(現東北大学医学部)に留学していた時代の恩師である藤野厳九郎氏との交流を述懐した作品で、中国では中学校の国語の教科書に、日本では高校の現代文の教科書に採用されています。

 このシンポジウムは中日国交正常化50周年を記念して企画されたもので、中日友好の象徴とされる『藤野先生』を通して、両国の交流に対する理解を深めるとともに、文学が持つ本来の力や価値を知ってもらうことを主旨としています。

 会場となったあわら市は藤野厳九郎氏の出身地です。シンポジウムでは同市の森之嗣市長が開会のあいさつに立ち、あわら市と魯迅の出身地である紹興市が1983年に友好都市関係を結んでからの歩みを振り返り、「今後も幅広い分野において友好交流を深めていく」との考えを表明しました。

 シンポジウムにオンラインで参加した紹興市第一中学校の国語教師・李妙芸氏は、『藤野先生』で描かれた内容について、「『私』と藤野先生の交流と、『私』と祖国への思いとが、明暗2本のラインとなって同時に進展する」と解説しました。新潟県立小出高等学校の神田富士男教諭は、「授業では生徒たちに、『私』が藤野先生を『偉大な人格だ』と思うに至った背景を掘り下げて考えるよう指導してきた」と紹介しました。

 また、都留文科大学の田中実名誉教授が「近代小説の未来」と題して基調講演を行い、作品の深層を読み解く例として『藤野先生』を挙げ、「この作品は仙台医学専門学校時代の藤野先生との別れ、『惜別』の思いを語りながら、自身の主体を超えて絶対性と向き合う現在の『私』、つまり魯迅の魂を語っている。現在の『私』は藤野先生を尊重しながら、医学と文学、中国と日本の架け橋をかけようとしている」と分析しました。


シンポジウム会場の様子

 今回のシンポジウムは都留文科大学(山梨)で日本近代文学を研究する周非特任准教授が企画・主催し、福井県あわら市、山梨県の文学研究会「朴木の会」、新潟文学教育研究会が共同主催したもので、現地の会場には約50人が来場しました。(記事:王小燕、校正:梅田謙、写真は主催者提供)

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