北京
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日本政府が16日にも閣議決定する「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書改定が、平和主義の日本の「国のかたち」を転換するものであるという危機感から、民間団体「平和構想提言会議」が15日午後、東京で平和構想「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げないー」を発表しました。
発表会であいさつする川崎哲さん(ピースボート共同代表)
分量にして1万8千字。現状分析、「国家安全保障戦略」改定の問題点、考え方の転換と今後の課題など4部構成のこの構想文は、敵基地攻撃能力の保有をはじめとする日本政府の一連の政策を、「日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との関係を悪化させ、軍拡競争を助長するきわめて危険なもの」と指摘。そのうえで、「そうした決定が、憲法の下での民主的過程を経ずに強行されようとしている」と切り込みました。
また、日本政府が軍備増強の理由にあげていた台湾海峡情勢については、「日本が米国とともに台湾有事を誘発するような挑発行為をおこない、その結果として自ら戦争の当事国になるリスクを高めるという、負のスパイラルに陥っている」と分析しました。また、軍事同盟としての特徴をますます強めている日米同盟を念頭に、「際限なき『同盟強化』は世界大戦につながる」とけん制しました。
なお、安保3文書改定の問題点について、構想文は敵基地攻撃能力/反撃能力、防衛費倍増 、武器輸出の全面解禁、核兵器への依存の強化、日米一体で進む臨戦態勢や軍事が経済・社会・学術を支配することなどの論点から綿密に分析を行いました。
また、改定は「いわゆる抑止が破綻して日本の自衛隊が戦闘することを前提」にしている点に触れ、「専守防衛の肝は、隣国に届く武器をあえて持たないことによって他国への脅威とならないようにすることであった。この日本の防衛・安保政策の大原則が、いま根本から覆されようとしている」と指摘し、強い危機意識をあらわにしています。
また、今後の考え方の転換として、軍事力中心主義と「抑止力神話」からの脱却、日本国憲法の基本原則に立ち返り、「日米同盟」一辺倒から脱し、アジア外交と多国間主義の強化を声高に主張しました。
中国との関係については、「中国を『脅威』と認定することは、敵視することに他ならない」と指摘し、「敵視」政策の停止を呼びかけ、「日中国交正常化の共同声明、日中平和友好条約を再確認すべきである」「台湾独立を支持しない」と表明することなど、具体的な提案も行われています。
「平和構想提言会議」は日本政府が安保関連3文書の改訂、防衛力の抜本的強化をめぐる与党協議を進め、防衛費を「5年で対GDP比2%以上を念頭に」増額するなどの動きを背景に、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者ら14名が今年10月に発足したものです。平和構想の発表をもって、今後は国境を越えた市民社会の連携を目指すということです。
(記事:王小燕、校正:CK)